食品ロス(フードロス)を知り、減らす。原因や日本の対策・取り組みを紹介
2026年06月25日

まだ食べられる食品が廃棄されてしまう「食品ロス(フードロス)」。食品ロスは、食品そのものだけでなく、生産や輸送に使われた水資源やエネルギーなどの損失にもつながる社会課題です。
日本では年間464万トンもの食品ロスが発生しており、その削減に向けて国や自治体、事業者、消費者によるさまざまな取り組みが進められています。
本記事では、食品ロスの基本的な定義から、日本や世界における現状、発生の背景・原因、削減に向けた取り組みまでをわかりやすく解説します。
目次
食品ロスの定義とは?
日本の食品ロスによる廃棄量は年間523万トン
「食品ロス」とは、食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品のことを指します。なお、魚や肉の骨、野菜の皮など、もともと食べられない部分を含む「食品廃棄物」と食品ロスは別の概念です。食品廃棄物という広い枠の中に、食品ロスが含まれているイメージです。
食品ロスは大きく次の2つに分けられます。
- 事業系食品ロス
- 家庭系食品ロス
前者は製造・流通・外食など事業活動の過程で発生するものであり、後者は家庭での買い過ぎや食べ残しなどによって生じるものです。
また、食品ロスは単にもったいないというだけでなく、廃棄物問題や環境問題とも深く関わっています。食品の生産から流通、消費に至るまでには多くの資源やエネルギーが使われており、食べられる食品を廃棄することは、それらを無駄にしてしまうことにもつながります。
日本の食品ロスの現状は?
ここからは国内における食品ロスの現状を確認していきましょう。食品ロスの量や、それを受けて定められた削減目標について解説します。
日本の食品ロスは年間464万トン
日本の食品ロスは、令和5年度の推計で年間464万トンにのぼります。その内訳は、事業活動に伴って発生する事業系食品ロスが231万トン、家庭から出る家庭系食品ロスが233万トンと、ほぼ半分ずつを占めています。
これは決して一部の業界や家庭だけの問題ではなく、社会全体の課題であることを示しています。年間464万トンという食品ロスは、食品そのものだけでなく、生産・加工・流通に投入された資源やエネルギーも失われていることを意味します。
国民1人あたりに換算すると、年間約37kg、1日あたり約102グラムを捨てている計算になります。毎日おにぎり1個、あるいは約100グラムの肉を廃棄していると想像すると、その量の多さが実感できるでしょう。
さらに、食品ロスを経済的損失として見ると、国民1人あたり年間約31,814円に相当します。日々の小さな無駄が積み重なり、家計にも社会にも大きな影響を与えているのが現状です。
出典:消費者庁「2023(令和5)年度食品ロス量推計値の公表について」
内訳で見る食品ロスの現状
日本の食品ロスをより詳しく見ると、家庭系と事業系で発生の特徴や内訳が異なります。家庭系食品ロスは、私たち一般家庭での調理や食事の過程で発生するもので、その主な分類として「食べ残し」「直接廃棄」「過剰除去」の3つがあります。これは環境省も示している区分で、家庭から出る食品ロスの多くがこの3つから構成されています。
「食べ残し」とは、食卓に並んだ食品を食べきれずに廃棄してしまうものをいいます。「直接廃棄」は、調理前や食べる前の段階で、賞味期限切れや傷みなどの理由でそのまま捨ててしまう食品を指します。
そして「過剰除去」は、例えば野菜の皮を必要以上に厚くむくなど、もともと食べられる部分を不要に取り除いて捨ててしまうことです。これらは日々の買い物や調理、保存方法などによって発生しやすくなるため、家庭での工夫によって減らせる可能性があります。
一方、事業系食品ロスは食品製造業・卸売・小売・外食など、流通や販売の過程で発生するものです。例えば規格に合わない商品や売れ残り、外食時の食べ残しなどが含まれます。
このように、家庭と事業では食品ロスが発生する要因が異なります。そのため、それぞれの実態に合わせた対策を進めることが重要です。
日本の食品ロス削減目標
日本では、食品ロスの発生量を抑えるための政策目標が設定されており、SDGsの目標も踏まえ、2000年度比で2030年度までに食品ロスの発生量を半減することを目指しています。
過去の推移を見ても、食品ロスは近年着実に減少傾向にあります。
- 令和元年度:570万トン
- 令和2年度:約522万トン
- 令和3年度:523万トン
- 令和4年度:472万トン
- 令和5年度:464万トン
しかし、目標達成にはなお課題が残ります。半減目標に向けては取り組みが進んでいるものの、家庭や事業における削減努力が重要であり、国民全体での意識と行動が引き続き求められています。
出典:環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について」
食品ロスの問題点
このように削減が求められる食品ロスですが、そもそもどのような問題があるのでしょうか。以下では、具体的な2つの問題点を解説します。
問題点①食品廃棄における環境への負荷
食品ロスは、地球環境にも大きな影響を及ぼします。日本の食料自給率は38%にとどまり、多くの食料を海外からの輸入に頼っています。その際、船舶や航空機による輸送で二酸化炭素(CO2)が排出されますが、せっかく運ばれてきた食品を廃棄すれば、その過程で生じた環境負荷も無駄になってしまいます。
さらに、廃棄物の回収や焼却処理の段階でもCO2が発生します。食品ロスは「食べ物の無駄」だけでなく、水資源やエネルギー、物流など、食品を支えるさまざまな資源の無駄にもつながります。
世界全体では、温室効果ガス排出量の約8%〜10%が食品ロスに関連すると推計されています。日本でも、食品ロスは温室効果ガス排出の一因とされており、削減は環境負荷の低減や脱炭素化につながります。食品ロス削減は、資源の有効活用だけでなく、気候変動対策の観点からも重要な取り組みです。
出典:消費者庁「食品ロス削減ガイドブック」
出典:消費者庁「食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果」
問題点②生産や廃棄にかかる膨大なコストや労力
食品ロスは、単に食べ物を捨てるという問題にとどまりません。食品が私たちの手元に届くまでには、生産・加工・流通といった多くの工程があり、その過程でエネルギーや資金、そして生産者や労働者の労力が投入されています。廃棄されるということは、それらすべてが無駄になってしまうことを意味します。
さらに、食品ロスを含む一般廃棄物全体の処理には年間約2兆円もの費用がかかっており、ごみの収集や焼却、埋め立てといった各工程で社会的コストが発生しています。こうした処理費用の多くは税金で賄われています。
家庭に目を向けると、消費支出のうち食費は4分の1以上を占めています。購入時にお金を払い、廃棄時にも税金を負担することになる食品ロスの問題は、家計と社会の双方に多くの無駄を生み出しています。
出典:消費者庁「食品ロスについて知ろう」
出典:消費者庁「食品ロス削減ガイドブック」
食品ロスが起きる原因は?
ここからは食品ロスが発生する原因を確認していきましょう。原因を知ることで、求められる対策が見えてきます。
原因①フードサプライチェーンの問題
食品が消費者のもとに届くまでには、生産、加工、流通、販売といった複数の工程を経る「フードサプライチェーン」が存在します。食品ロスは、この一連の流れのあらゆる段階で発生しています。
例えば、生産現場では規格外とされた農産物が出荷されずに廃棄されることがあります。加工段階では需要予測のずれにより余剰在庫が生まれ、流通・小売では小売店舗への納品期限に関する商慣習や売れ残りがロスにつながります。外食産業でも、仕込み過多や食べ残しが課題です。
このように食品ロスは単一の工程で発生するものではなく、サプライチェーン全体の仕組みや慣行の積み重なりによって発生しています。サプライチェーン全体で食品ロスを減らすことは、資源の有効活用や循環型社会の実現にもつながります。
原因②消費者の意識や購買行動による影響
食品ロスの発生には、生産・流通・販売の仕組みだけでなく、消費者の購買行動や市場ニーズも関係しています。
例えば、賞味期限が長く残っている商品が選ばれやすい傾向があるため、小売店では期限の近い商品の販売が課題となる場合があります。また、食品の見た目や品質に対する期待が高いことから、規格外品の活用が進みにくいケースもあります。
こうした背景から、事業者は品質管理や販売方法の工夫に取り組むとともに、食品ロス削減に向けたさまざまな対策を進めています。食品ロスの削減には、事業者だけでなく消費者を含めた社会全体での取り組みが重要です。
食品ロスを解消するための対策とは?
食品ロスの原因がわかったところで、最後に解消するための対策を紹介します。個人でできるものから、企業や自治体単位のものまで、食品ロスを解消するためにさまざまな取り組みがなされています。
食品ロス削減の推進に関する法律
食品ロス対策を社会全体で進めるため、日本では令和元年に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されました。この法律は、まだ食べられる食品が廃棄されている現状を踏まえ、国・自治体・事業者・消費者それぞれの役割を明確にし、連携して削減に取り組むことを目的としています。
国は基本方針を策定し、自治体は地域の実情に応じた施策を展開します。また、事業者には商慣習の見直しや情報提供が求められ、消費者にも日々の行動を見直すことが期待されています。法整備により、食品ロス削減に向けた取り組みが社会全体で推進されるようになりました。
政府による食品ロス削減に向けた取り組み
政府は、食品ロスを減らすために多角的な施策を進めています。まず、流通段階での商慣習の見直しを推進し、過度に短い納品期限などが廃棄を生まないよう改善を図っています。また、まだ食べられる未利用食品の寄附を後押しし、フードバンク活動の支援にも力を入れています。
さらに、需要に見合った生産・販売の促進や、消費者への啓発活動も施策の重要な柱です。外食時の「食べきり」や、食べ残しの「持ち帰り」を促す取り組みも広がっており、小売店では、賞味期限の近い商品から購入する「てまえどり」を呼びかける動きも定着しつつあります。
加えて、優れた取り組みを表彰する「食品ロス削減推進表彰」や、啓発活動を担う「食品ロス削減推進サポーター制度」などを通じて、社会全体での問題意識の醸成を図っています。
地方公共団体や事業者の取り組み事例
日本各地の自治体や企業でも、地域の実情に合わせた食品ロス削減の取り組みが進んでいます。
例えば、長野県松本市で始まった「3010運動」は、乾杯後の30分とお開き前の10分を料理を楽しむ時間とすることで食べ残しを減らそうとする取り組みです。現在では他の自治体にも広がっています。
また企業では、包装技術の改良による品質保持期間の延長や、賞味期限の近い商品の値引き販売、フードバンクへの寄付など、さまざまな方法で食品ロス削減を進めています。
自治体と企業が、それぞれの強みを生かして食品ロスの発生抑制に取り組むことは、資源の有効活用や循環型社会の実現にもつながる重要な取り組みといえるでしょう。
一般家庭でできる対策
このように政府が主体となって食品ロスへの取り組みを進める一方で、各自治体や企業などがユニークな取り組みを行っている事例もあります。しかし、食品ロスを半減させる目標の2030年に近づく今、より一層効果的な施策が必要とされています。また、その先にある2050年カーボンニュートラルの実現のためにも、食品ロスの問題をそれぞれの立場で推進することが、今後さらに求められるでしょう。
食品ロス削減は、日々の暮らしの中でも実践できます。買い物や保存方法を少し工夫するだけでも、食品の無駄を減らすことにつながります。
■買い物時
・買い物前に、冷蔵庫や食品庫の在庫を確認し、必要な分だけを購入する
・利用予定に合わせて商品を選ぶ
・すぐに使う食品は、棚の手前にある商品から選ぶ(てまえどり)
■家庭内
・食品ごとに適した方法で保存する
・賞味期限と消費期限の違いを理解する
・使い切れそうな食材から優先して消費する、食べきれる量を調理する
■外食時
・小盛りメニューやハーフサイズを活用する食べきれる量を注文する持ち帰りが可能な場合は店舗のルールに従って利用する
■宴会時
・料理を楽しむ時間を意識的に設ける
・「3010運動」などを活用し、食べ残しを減らす
このような取り組みは、一人ひとりが今日から始められる食品ロス対策です。家庭での小さな工夫の積み重ねが食品ロスの削減につながります。
食品ロスポータルサイト
食品ロスについて詳しく知りたいときに役立つのが、環境省が運営する「食品ロスポータルサイト」です。このサイトは、食品ロスに関する基本知識や最新データ、削減のための具体的な方法をまとめたプラットフォームとして機能しています。
特徴は、利用者の立場ごとに情報が整理されている点です。家庭で実践できる工夫を知りたい消費者向け、地域での取り組みを進めたい地方自治体向け、業務改善や取り組み事例を探す事業者向け、そして活動支援を求めるNGO向けと、目的に応じた情報が見やすく提供されています。
食品ロスについて初めて調べる人でも、必要な情報にたどり着きやすい構成になっているため、学習や施策立案に役立つ頼もしいリソースです。
出典:環境省「食品ロスポータルサイト」
まとめ
本記事では、食品ロスの定義や日本の現状、発生の背景、環境・経済への影響、そして国や自治体、事業者による対策までを幅広く紹介してきました。
食品ロスは、食べられる食品が廃棄されることで、環境や経済にさまざまな影響を及ぼす社会課題です。また、食品そのものだけでなく、生産や加工、輸送に使われた資源やエネルギーの損失にもつながります。
この課題の解決には、消費者・事業者・行政が連携して取り組むことが重要です。私たちの暮らしや産業を支えるさまざまな資源についても、その価値を見直し、循環させていくことが持続可能な社会の実現に欠かせません。食品ロスを減らすことは、食べ物を大切にするだけでなく、限りある資源を未来へつなぐ一歩にもなります。








