
水銀廃棄物規制の施行対応とは?(後編)
2017年08月29日

目次
「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」
前回から、政省令が出ていない段階で、水銀廃棄物規制について取り上げました。
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今回は、政省令を受け、「水銀使用製品産業廃棄物」への対応についてと、「水銀含有ばいじん等」の分析の必要性についてまとめます。
水銀使用製品産業廃棄物
「水銀使用製品産業廃棄物」とは、水銀を使用している製品が産業廃棄物になったもので、蛍光灯や水銀体温計など、以下の3パターンがあります。
①水銀を使用している製品(該当製品が列挙されています)
②上記①を組み込んでいる一部の製品
③水銀を使用していると表示がある製品
詳しくは、下記の環境省のリーフレットか、
http://www.env.go.jp/recycle/waste/mercury-disposal/H2906_setsumei_01.pdf
水銀廃棄物ガイドラインをご覧ください。
http://www.env.go.jp/recycle/waste/mercury-disposal/h2906_guide1.pdf
<規制の内容>
水銀使用製品産業廃棄物は、特別管理産業廃棄物には該当しません。
普通の産業廃棄物でありながら、以下の上乗せ規制がかかります。
契約書
具体的には、排出事業者は2017年10月1日以降の”新規契約or既存契約の更新”時に、「水銀使用製品廃棄物」である旨を契約書に記載することが求められます。更新する際には、覚書かWDSの追加という方法がよいでしょう。
アスベストの「石綿含有産業廃棄物」と似た形式です。
許可証
また、処理業者が「水銀使用製品産業廃棄物」を扱う許可があることを確認して委託しなければなりません。
しかし、収集運搬業者、処分業者は、10月1日以前に「水銀使用製品産業廃棄物」を扱っている実績があれば、その時点で許可証の変更をする義務はありません。
排出事業者としては、許可証に変更がないので、(自社からの委託の実績でもない限り)許可があることを書面で確認する方法が明確に示されていません。
処理業者に確認するか、自治体に相談することになるでしょう。
ただし、許可証の変更がなくても、「運搬時に破砕しないように」、「処分時に水銀の大気中に飛散しないように」するなどの、処理基準の適用があります。
したがって、委託する場合には、どのような処理をされているかも確認しておくべきでしょう。
なお、10月1日以降の許可更新時には、処理業者が”扱う旨”の申請をすることで、「水銀使用製品産業廃棄物」を扱うことができると許可証に記載されます。しかし、自治体によっては、更新を待たずに申請ができるところもあり、10月1日に書き換えができるように、既に変更申請の受付を始めています。
詳細は、各自治体のウェブページをご確認ください。
マニフェスト
マニフェストには「水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨」と「数量」の記載が必要です。現行デザインのマニフェストを継続して使用できますので、追記することになります。在庫がなくなったら、新しいデザインのマニフェストが販売されるとのことです。
全国産業廃棄物連合会のウェブページのQ8にあるリンクをご参考ください。
https://www.zensanpairen.or.jp/disposal/manifest/faq/
電子マニフェストは、既に対応しています。
http://www.jwnet.or.jp/jwnet/pdf/hg-code-setting.pdf
「水銀含有ばいじん等」の分析について
従来の水銀の特別管理産業廃棄物は、鉱さい、ばいじん、汚泥、廃酸、廃アルカリであって、
①特定の施設から排出され
②基準(0.05㎎/L・0.005㎎/L)を超える
の両方に該当するものが対象でした。
「水銀含有ばいじん等」は、燃え殻、鉱さい、ばいじん、汚泥、廃酸、廃アルカリであって、
①水銀を15mg/kg(L)を超える
ものが対象です。上記のように施設の限定はありません。
特別管理産業廃棄物に比べるとかなり基準は甘いようですが、施設限定がないため、対象範囲は広いです。
ただし、全て分析が必要かというと、分析を義務化しているものではありません。
基準を超えると規制がかかりますが、これはかなりの濃度です。
原材料と工程から含まれないことがわかるのであれば、分析は不要です。
水銀回収について
先にご紹介したリーフレットやガイドラインにもありますが、液体の金属水銀を使用している水銀体温計等については、焼却や埋立てではなく、水銀回収が必要です。
処分方法を確認して、水銀回収ができる処理業者に委託してください。
これを機に、蛍光灯はLEDに、水銀体温計はデジタル式のものに切り替えを検討しましょう。
(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)