
5分でわかる 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」のポイント
2024年06月07日

「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」が成立し、2024年5月29日に公布されました。全53条で構成され、廃棄物処理法の特例を定めた法律です。
本コラムでは、この法律のポイントをわかりやすく解説していきます。
目次
■背景
日本国内で排出される温室効果ガスのうち、資源循環が貢献できる余地がある部門の排出量の割合は約36%という試算もあり、資源循環と脱炭素化の取り組みは両輪で進める必要があります。
また、資源循環と脱炭素化の取り組みは世界的に加速しており、特に欧州の環境政策の影響は欧州内に留まらず、日本の産業界にも大きな影響を与え、多くの企業で再生材の利用を促進すべく製品の設計や製造プロセスの見直しに取り組んでいます。
このような状況を踏まえ、製造業者等が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるよう、再資源化事業の高度化と資源循環産業の発展を促進すべく「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」は制定されました。
(出典)中央環境審議会循環型社会部会第四次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検及び循環経済工程表に関する参考資料
■概要
この法律では、温室効果ガスの排出量削減効果が高い資源循環の促進を図るために次のような措置が講じられています。
1.関係者の努力義務
国の責務 |
・関係者への技術的援助 |
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地方公共団体の責務 (第5条) |
・再資源化事業等の高度化を促進のための措置 | |
廃棄物処分業者の責務 (第6条) |
・再資源化事業の高度化及び再資源化に必要な措置 ・再資源化実施状況の開示 |
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事業者の責務 (第7条) |
・廃棄物の分別と再資源化 |
2.再資源化の促進(資源循環産業全体の底上げ)
再資源化事業等の高度化に関する判断基準の策定
再資源化事業高度化の促進に関する廃棄物処分業者の判断基準として、以下の内容を環境省令で定めるとしています。
- 需要に応じた再生材の供給に関する事項
- 再資源化の生産性・技術の向上に関する事項
- 温室効果ガス削減のための設備改良、運用改善に関する事項
- 再資源化の目標設定と取組事項
- その他、再資源化実施の促進に必要な事項
3.「特定産業廃棄物処分業者」の再資源化実施状況報告制度の創設
特に処分量の多い産業廃棄物処分業者を「特定産業廃棄物処分業者」と定め、「特定産業廃棄物処分業者」に該当した産業廃棄物処分業者は、毎年度、再資源化実施状況を環境大臣に報告しなければなりません。また、再資源化実施状況が著しく不十分な場合は、勧告・命令の対象となります。(命令違反の罰則あり)
4.国の認定制度の創設
再資源化事業などの高度化に係る認定を国が一括して行う制度が設けられました。この認定を受けると廃棄物処理法上の処理業許可、施設設置許可などが不要になります。
この認定制度の申請形態は3つあります。
(出典)環境省/資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の概要 https://www.env.go.jp/content/000208833.pdf
①高度再資源化事業計画の認定(第11条)
需要に応じた質、量の再生材を確保するために広域的な再資源化事業を目的とした認定制度。
- 需要に応じた廃棄物の再資源化を目的とした収集運搬及び処分事業が対象
- 認定を受けると収集運搬業と処分業許可及び施設設備許可が不要となる
- 事業計画に記載した収集運搬又は処分の委託先も許可不要となる
②高度分離・回収事業計画の認定(第16条)
分離・回収技術の高度化に係る施設設置の促進を目的とした認定制度。
- この認定制度の対象となる廃棄物は省令で定められる
- 高度な技術を用いて廃棄物からの分離・回収を行う処分事業が対象
- 認定を受けると廃棄物処分業許可、施設設置許可が不要となる
(※収集運搬行為は当該認定制度の対象外)
③再資源化工程高度化計画の認定(第20条)
温室効果ガス削減効果を高めるための高効率な設備導入の促進を目的とした認定制度。
- 廃棄物処理施設の設置者が対象
- 認定を受けると廃棄物処理施設の変更許可を受けたものとみなされる
5.施行日
この法律の施行日は、公布日から1年6カ月を超えない範囲で定めるとされ、今後制定される政省令で具体的な施行日や運用ルールなどの詳細が定められることになります。
■さいごに
既に施行されている各種リサイクル法でも廃棄物処理施設設置許可を不要としたものはありません。この法律の政省令が制定されていないため、国の認定制度の運用ルールなど不明な点はありますが、この法律が脱炭素化のみならず、リサイクラーの追い風になることを期待します。
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