
5分で分かる「自動車リサイクル法」自動車リサイクル料金は何に活用されているの?
2023年01月24日

自動車業界は100年に一度の大変革時代に突入し、カーボンニュートラル、EV、水素自動車など、目まぐるしく環境の変化が行っています。
日本には、世界では珍しい自動車リサイクルの法律が制定され、不法投棄が起こらないような仕組みになっています。
2005年1月から施行されている自動車リサイクル法がどのような役割を担っているか、リサイクル料金がどのように使われているか、ポイントを説明します。
目次
自動車リサイクル法とは
2000年代に自動車を破砕した際に出てくるシュレッダーダスト(以下:ASR)等を香川県の豊島へ不当投棄された社会問題に端を発して、生産者製造責任として使用済自動車から有用な金属・部品等の有用な資源以外の処理困難物の適正処理を自動車メーカー・輸入業者に義務付けられた法律です。
簡単に言うと、年間約350万台発生する使用済自動車を適正にリサイクル・処分することを定めたセーフティネットの法律となります。
※不法投棄で問題となった、シュレッダーダスト(ASR)
自動車リサイクル法のポイント
①自動車所有者と料金
・ユーザーは、新車時又は廃車時(車検時)にリサイクル料金を前払いで支払う(預託)
・中古車として譲渡する場合は、車の価値+リサイクル料金で売買できる
※ユーザー=自動車所有者 廃車時の最終ユーザーを意味する。
②自動車メーカーの役割
・フロン類・エアバッグ類・ASR(3品目)を引取り、適正な処理の義務
・車載用リチュウムイオン電池の無償回収・処理スキームの維持・管理
※各工程での責務は、自動車メーカーが業務委託した事業者を意味する。
③自動車関係者の役割(責任)の明確化とシステム
・ユーザー、引取業者、フロン類回収業者、解体業者、破砕業者、自動車メーカー、輸入業者の役割を明確にしている
・廃車を処理していくにあたり、各工程を電子マニフェストというシステムで管理し、報告を義務付けている
自動車リサイクル料金は、自動車が適正にリサイクルされるためのシステムの運営や特定の廃棄物の処理に充てられています。
ユーザーは自動車の購入時にリサイクル料金の負担が義務付けられており、中古車など所有権が移った際は合わせて自動車料金を新しいユーザーが負担する流れになっています。
リサイクル料金で処理される対象物は「フロン」「エアバック」「ASR」の3品目となっており、その他の鉄や非鉄類は資源として鉄鋼メーカーなどに売却されリサイクルされます。まだ使用できるパーツは自動車中古パーツとして、国内・海外で再び自動車に利用されています。
各メーカーや事業者などのリサイクルの役割が明確化されているとともに、自動車リサイクルに関するシステムも構築されています。
役割を持った業者は、各車両で処理が完了すると都度、情報管理センター(電子マニフェスト)のシステムに登録をかける仕組みになっています。
自動車リサイクルの流れ概略図
※参照資料:JARCデーターBook2021版
使用済自動車の大まかな流れとしては、自動車所有者やディラー等から手続きをした、廃却車両を「引取業者」が運搬し、「自動車解体業者」によって、フロン、エアバッグを所定の方法で回収、処理されます。
その後、破砕業者に持ち込まれ、こぶし大の大きさに砕かれ、資源としてリサイクルされます。
各工程の進捗はすべて、電子マニフェストへ報告が義務付けされており、トレサビリティが厳格に追われています。
リサイクル料金についてはJARCが管理し、フロン、エアバッグ、ASRは関係会社を通して支払われる仕組みになっています。
自動車関係者の役割概要
※参照資料:JARCデーターBook2021版
自動車リサイクル法の施行のメリット
①不法投棄車両が激減
②離島発生・撤去必要な廃棄車両及び義務者不存在の廃棄車両の処理費や輸送費用の支援
住民や自治体のお困りの廃棄車両の輸送費や撤去費の支援で不法投棄の削減
③自動車の3R活動に向けた技術開発への支援
一部活用されなかったリサイクル料金で、各リサイクラーの技術開発等への支援事業
自動車リサイクル法ができたことにより、不法投棄が大幅に減少できたとともに、自動車リサイクルの技術向上に貢献しています。
最後に
自動車ユーザーから預託されたリサイクル料金は所轄官庁監視のもと厳重に管理運用されており、概ね良好に推移しています。
今後、新しい自動車製造にあたっては、リサイクル材の使用を義務化する動きが議論されており、自動車リサイクル法の意義や役割も変化していくと思われます。
概要/用語説明(台数等は2021年度引用)
- 預託台数(新車購入時422.0万台/預託金額404.5億円)
…新車購入時にリサイクル料金預託した台数。別途、廃車時預託した車両もある
概ね、新車販売台数同等 - 中古車輸出の再資源化預託金の返還(134.4万台/返還金額169.2億円)
…中古車輸出時に中古車輸出業者(最終所有者)がリサイクル料金返還手続きした車両
中古車輸出平均使用年数(車歴)11.5年と伸びており、最近時は軽自動車も微増傾向 - 使用済自動車の引取件数(304.2万台/引取業者12,216事業所)
…使用済自動車(ELV)をOEMディラーや解体事業者等が引取りしている台数
ELV平均使用年数(車歴)16.0年と伸びている。 - フロン類回収業者(3,302事業所)/エアバッグ類解体業者(3,233事業所)
…ELVからフロン類取出し/エアバック類処理を実施している業者
因みに、フロン類破砕施設/エアバッグ類リサイクル施設の維持運営は再資源化協力機構所管 - 破砕業者(874事業所)
…解体業者で解体された廃車ガラを破砕加工(シュレッダー)し有用金属等取除いたASRをASR再資源化施設(28条指定引取場所)へ排出する。車両をプレスする場合、破砕業者に法律上は該当する。 - 認定全部利用
…廃車ガラをASRとプレス(Aプレス)した状態で事前認定された電炉へ鉄原材料として投入(31条認定全部利用)することを言う。
因みに、28条指定引取場所/31条全部利用施設の維持運営はTH/ARTチームが所管 - 非認定全部利用
…解体業者・破砕業者の判断で、ASR含んだ廃車ガラを電炉へ鉄原材料として投入するか又は輸出することを言う。 - 電子マニフェスト
…新車購入~ASR処理までは電子マニフェストで各担当部署の移動報告義務が有る。
因みに電子マニフェストの維持管理は自動車リサイクル促進センター(JARC)が所管
JARCは、3法人あり、預託金の維持管理、運用及びセーフティネット機能支援も所管
(参考出展)
自動車リサイクルの概要|自動車リサイクルとは|公益財団法人 自動車リサイクル促進センター
自動車リサイクルデータBook|データ・申請書類等|公益財団法人 自動車リサイクル促進センター
ASR再資源化事業部 > 事業プロフィール | 豊通リサイクル株式会社