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都市鉱山とは?日本が活用するメリットと企業が取り組むべきことを解説

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携帯電話などの電子機器には、さまざまな資源が含まれています。こういった、日常に溢れている資源を鉱山に例えた言葉が「都市鉱山」です。製品製造に使用する資源の多くを輸入に頼っている日本では、資源確保が課題となっており、都市鉱山は重要なキーポイントとなっています。

都市鉱山をはじめ製品から再利用する金属資源は、天然の鉱物から採掘する場合と比較してエネルギー消費やCO2排出量が少ないのが特徴です。そのため、脱炭素の観点からも活用する動きが進んでいます。

この記事では、都市鉱山の基本知識やメリットを解説します。都市鉱山の活用において企業が取り組むべきことについてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

目次

都市鉱山とは「生活の中に眠る金属資源」

都市鉱山とは、日常生活に溢れているさまざまな金属資源を鉱山に例えたものです。携帯電話やパソコンなどのデバイスやテレビ、冷蔵庫などの家電製品、自動車、また工場から排出される産業廃棄物には、金、銀、銅、レアメタルなど多くの貴重な金属資源が含まれています。これらの使用済み製品から金属資源を回収し、再生資源として活用するという考え方と取り組みが都市鉱山の本質です。

 都市鉱山の活用は、資源の有効活用や環境保全といった観点からも注目を集めています。資源確保を課題としている日本においては、今後も重要性が高まるリサイクル方法となるでしょう。

都市鉱山が注目される背景

都市鉱山への関心は、1980年頃から「エコ」や「リサイクル」という概念が社会に浸透し始めたことで高まりました。この頃から都市で発生する廃製品から金属資源を回収・再利用する動きが徐々に広がっていきましたが、特に注目されるようになったのは2010年です。

この年、中国がレアアースの輸出を一時停止したことがきっかけとなり、資源安全保障の観点から都市鉱山の重要性が再注目されるようになりました。日本は金属資源の多くを輸入に頼っている状況のため、廃製品から金属資源を安定的に回収・リサイクルできる技術や社会システムの構築が必要だとされたのです。

日本の都市鉱山は世界トップレベル

2008年1月に発表された国立調査機関の推計によると、日本の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模であることがわかっています。同推計において日本に蓄積されている金は約6,800トンと判明しており、これは世界の現有埋蔵量の約16%に相当するとされています。

この調査結果をきっかけに、日本国内の都市鉱山を活用するため2013年に「小型家電リサイクル法」が施行されました。「家電リサイクル法」の対象となる家電4品目を除く、携帯電話やパソコン、扇風機やこたつなどの28品目がリサイクル対象となり、自治体や小売店で回収されています。

この法律により、2020年度には約102000トンの使用済み小型電子機器などが処理され、そのうち2,000トンが再利用されました。また、残りの約10万トンからは約52000トンもの金属が再資源化されており、リサイクルに大きく貢献していることがわかります。

都市鉱山を活用するメリット

都市鉱山の活用は、資源確保・調達のほかにもさまざまなメリットがあります。環境保全や日本国内の産業発展の観点からも大きなメリットが期待できるため、国や自治体、企業は都市鉱山を活用する技術を高めていくことが重要です。

環境に優しい

都市鉱山から資源を回収することは、自然環境に大きな負荷をかける鉱山採掘作業の低減につながります。また、家電製品などの廃棄物が適切にリサイクルされることで、ゴミの排出量が減少し、埋め立て地の削減にもつながります。さらには、有害物質による土壌や水質の汚染リスクも減らせるでしょう。

環境負荷の少ない方法で貴重な資源を確保・回収できる点は、SDGsが掲げる「つくる責任 つかう責任」や「気候変動に具体的な対策を」などの目標達成にも貢献します。そのため、都市鉱山の活用は、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みといえます。

 資源循環の実現につながる

都市鉱山の活用は天然鉱山からの採掘と比較すると、効率的な資源獲得方法だといえます。たとえば、金鉱山1トンから採掘できる金はわずか5gなのに対し、回収された携帯電話1トン(約1万台)からは約280gもの金が採取できるというデータもあるほどです。採掘に関わるコストや環境負荷も考慮すると、大きなメリットがあるといえます。

また、金属は「水平リサイクル」が可能なため品質を落とさずに同等の製品へと再生できます。この水平リサイクルの仕組みが社会に広がれば、貴重な資源を循環させて何度も利用できるので、資源輸入による国富の流出を防ぐなどの経済的メリットも期待できるでしょう。

日本の産業が発展する

都市鉱山を効率良く活用できれば、日本国内の資源確保がしやすくなり、輸入依存度の低減が期待できます。貴金属やレアメタルの生産国は世界的にも限られているため、これらの輸入が滞ると日本のような資源小国の産業は大きな影響を受けてしまいます。しかし、自国内にて必要な量の資源を確保できれば、価格高騰などの世界情勢の影響を受けることも少なくなり、持続的な産業発展を目指せるでしょう。

都市鉱山を活用するうえでの課題

都市鉱山の活用は大きなメリットがあります。しかし同時に、さまざまな課題もあります。特に重要視されているのは、資源となる使用済み製品や小型家電の回収に関わる問題です。都市鉱山をさらに効率良く活用していくには、フローやコストの問題を解決し、回収率を上げることが期待されています。

 回収率が低い

都市鉱山の活用における課題の一つが、金属資源を含む廃棄物の回収率の低さです。現状では家電製品や携帯電話などの回収が進んでおらず、十分な量の資源を確保できているとはいえません。

 特に、携帯電話については「令和5年度 携帯電話におけるリサイクルの取り組み状況について」によると、回収実績は3,633台で、目標の回収率20%に対する実績は9.4%と半分以下にとどまっていることがわかります。回収されない要因としては、一般廃棄物としてほかの素材と一緒に埋め立てられてしまうケースが少なくないようです。また、「どこにどの金属が蓄積し、使用済み製品として排出される可能性があるのか」といった情報が不足していることも考えられます。天然の鉱山開発のような体系的なプロセスとは異なり都市鉱山の資源量は変動するため、安定した回収計画を立てることが難しいのです。
 参照:令和5年度 携帯電話におけるリサイクルの取り組み状況について|情報通信ネットワーク産業協会

回収フローが確立できていない

都市鉱山の資源を効率良く回収するためのフローが十分に確立できていないことも、課題の一つです。現状では、使用済みの家電や携帯電話を手元に保管し続ける方々が一定数います。そのため、市場に出回っている製品をすべて回収できるわけではなく、どの程度の資源が回収できるかといった見通しも立てづらい状況です。

 また、回収されずに、すでにゴミとして処理・埋め立てされてしまった製品も相当量あると推測できます。回収フローの複雑さや消費者の認知不足も課題であることから、効率的かつ持続可能な回収の仕組みづくりが急務であるといえるでしょう。

 回収・再資源化のコストがかかる

都市鉱山から資源を効率良く回収したり、それを再資源化したりするには、多大なコストがかかります。なぜなら、都市鉱山から再利用できる金属資源を集める回収システムの構築や運営だけでなく、その後の解体作業や分別、リサイクルなど、多くの工程が発生するためです。

コストを最小限にするためには、国や自治体だけでなく、民間企業や一般家庭などの協力を得て資源回収を効率化することが求められます。使用済み製品をゴミとして出さないことや、貴重な資源となることを周知していく啓発活動も大切です。

また、廃棄物から効率良く資源を回収する技術力の向上も不可欠です。技術開発や設備投資にもコストが発生するため、リサイクル企業が持続的に事業を展開できるように採算がとれる仕組みづくりを確立していくことも重要だといえます。

 

都市鉱山の活用のために企業ができること

日本の都市鉱山を有効活用するには、企業によるリサイクルへの取り組みが重要です。日常に溢れる使用済み製品や小型家電の回収も大切ですが、さまざまな事業活動で排出される産業廃棄物にも金属資源は豊富に使われています。

事業活動で排出される産業廃棄物を資源として効率良く再利用するには、適切な処理を行う事業者に依頼することや、リサイクルを推進することが重要です。それぞれの企業が資源への意識を高めていくことで、都市鉱山の活用を促進したり国内企業を成長させたりできるでしょう。

 産業廃棄物の適切な処理

企業が都市鉱山の活用に貢献するためには、事業活動から発生する産業廃棄物を法律に則って適切に処理することが基本となります。具体的には、事業活動で排出される産業廃棄物の種類や量を正確に把握し、それぞれにどのような処理が必要かを理解することが重要です。

単に廃棄処分するのではなく、産業廃棄物の中から再利用・リサイクル可能なものを積極的に分別し、資源の有効活用を図ることが求められます。特に、貴金属やレアメタルなどの金属資源となるものについては、捨てずに回収・活用する方法を積極的に探る必要があるでしょう。これらの取り組みを効率的に実施するには、企業内に廃棄物管理の責任者を設置し、社内教育を通じて全社的な意識向上を図るといった方法も有効です。

 リサイクルの推進

企業が都市鉱山の活用を考えるうえで重要なのは、使用済み製品や小型家電のリサイクルを顧客に積極的に促すことです。しかし、単にリサイクルの重要性を周知するだけでは十分ではありません。自社で回収システムを構築するなど、顧客が行動に移しやすくなるような仕組みを確立できるとより効果的です。

たとえば小売業であれば、下取りサービスの実施や回収ボックスの設置など、顧客の利便性を考慮した回収方法を検討するとよいでしょう。また製造業においては、将来的なリサイクルを見据えた製品設計を行うことも効果的です。回収した後を考慮し、解体しやすく、素材ごとに分離しやすい設計を採用すれば、リサイクル効率を高められます。こうした企業の一つひとつの取り組みが、都市鉱山の資源循環に大きく貢献するでしょう。

 金属資源や使用済み製品のリサイクルならリバー

都市鉱山を効率良く活用すれば、日本は資源大国となれる可能性を秘めています。海外からの輸入に頼らない資源調達が可能になれば、社会情勢や価格高騰といった影響を受けにくく、企業が安定して事業を継続できる環境にもつながります。

そのためには、資源循環に配慮したモノづくりへの革新とともに、高品質な再生資源の供給をするための選別・リサイクル技術の高度化が必要です。リバーでは2025年8月に壬生事業所を開設し、シュレッダーダスト(使用済み製品を破砕・粗選別した後に残る残渣物)から未利用だった金属やプラスチックなどの資源を効率的かつ安定的に再資源化することを目指しています。

また、リバーでは小型家電や電子廃棄物などのリサイクルも行っています。EC商品の廃棄やパソコンの入れ替えなどがございましたら、ぜひリバーへご相談ください。

 

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