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世界のプラスチック規制の動向は?各国の現状を解説

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近年、世界的にプラスチック廃棄物に対する規制が強化されており、各国で使い捨てプラスチックの削減やリサイクルの促進に向けた施策が実施されています。なかでもEUは環境負荷を軽減する取り組みをリードしているため、その動向を追うことは日本の企業にとっても重要です。本記事ではEUを始めとした世界のプラスチック規制の現状について解説します。

目次

なぜ世界的にプラスチック規制が進んでいるのか?

1.海洋生物の被害

便利で安価なプラスチックはあらゆるものに活用される一方で、その廃棄物の処理には手間とコストがかかり、種類も多く分別が難しいため、これまで多くの国で不適切に廃棄されてきました。毎年推定1,100万トンのプラスチックが海洋に流れ込んでおり、漂流ごみとして海岸に蓄積されるなどし、それらは「太平洋ゴミベルト」と呼ばれるほどに。さらにそのごみを海鳥が誤食したり、ウミガメが漁網に絡まってしまったりと被害が発生。その写真や映像が公開されると、痛々しい姿がセンセーショナルに報道され、世界中で関心が高まる契機となりました。このままでは、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算もあり、各国で喫緊の課題となっています。

2.マイクロプラスチックによる人体への影響

プラスチックごみは海洋中の生態系を破壊するだけでなく、人体への影響も懸念されています。魚介類が微細なプラスチック片である「マイクロプラスチック」を取り込み、その魚介類を食べた人間の体内にマイクロプラスチックが移行するためです。また、マイクロプラスチックが食品に溶出する可能性があるプラスチック製の食品容器などを通して、マイクロプラスチックを直接体内に取り込む可能性も指摘されています。これが人体にどのような影響を及ぼすかはまだよくわかっていないものの、これまでの研究でマイクロプラスチックは血液や心臓、肺や肝臓の組織、母乳、胎盤などから検出されており、体内に蓄積することが明らかになっています。さらにそれがさまざまな健康被害と関連しているという指摘もあり、マイクロプラスチックの危険性に注目が集まっているのです。

各国のプラスチック規制の現状は?

1.EUの現状

このようなプラスチックを取り巻く問題を受け、いち早く取り組みを開始したのがEUです。プラスチックのリサイクルを推進し、普及させたのは大きな成果ですが、一方で包装廃棄物(商品を包装していた資材)はリサイクル量を上回る速度で増加しているのが現状です。またその多くはプラスチック包装で、EUでは毎日、1人当たり0.5キログラムの包装廃棄物が発生していると推計されています。そのため、今後はEU全体で包装廃棄物の規制を強化する指針が示されており、直近では202412月に包装廃棄物に関する新たな規則が採択され、さまざまなルールが示されました。今後は以下の内容が事業者へ求められることになります。

2030年および2040年のリサイクル素材の使用率の目標値を達成する
・ペットボトルは2040年までにリサイクル素材の含有割合を65%にする
・包装材の重量や体積を最小限に抑え、不必要な包装を削減する
・悪影響が懸念される物質を制限する。特にPFAS(有機フッ素化合物)が一定の基準を超える食品接触包装を市場に出すことを制限する
・消費者がわかりやすいようラベルなどに素材に関する情報を記載する

さらに以下の包装材については、使い捨てプラスチックの使用自体が制限されることになります。

1.5kg未満の果物や野菜の包装
・ホテル、バー、レストランで消費される食品・飲料の包装と、調味料やソース、フレッシュ、砂糖などの個別包装
・宿泊施設で使用されるアメニティの包装
・軽量なビニール袋

これらの規制はEUへの製品輸出に際して準拠が求められるため、規制発効の影響はEU内のみならず他国の産業へも及びます。

日本では2023年のEU向け農林水産物・食品の輸出額が724億円にのぼっていますが、今のままではこれらの大半についてEUへ輸出できなくなることが予想されており、早急な対策の検討が求められています。

2.アメリカの現状

アメリカはプラスチックごみの排出量が世界で最も多い国ですが、毎年リサイクルしているプラスチックごみの割合は9%未満と、リサイクルに対して消極的です。しかも連邦レベルの包括的な規制はなく、州や企業の自主性へ任されているため、取り組みの度合いや考え方に大きなばらつきがあるのが特徴です。

リサイクルに積極的なカリフォルニア、コネティカット、ワシントン、オレゴン、コロラドなどの12州、およびサンフランシスコ市をはじめとする500以上の自治体では、独自にプラスチック製レジ袋の使用禁止や制限を行っています。特にカリフォルニア州では、2032年までに使い捨て食用プラスチック食器を25%減らし、食品サービス向け発泡スチロールの65%をリサイクルするという目標設定もしており、州内で販売される製品がリサイクル可能であることを義務付けています。しかし、20251月にドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領に就任し、「パリ協定」から離脱する大統領令に署名したことで、アメリカの環境問題への姿勢は不透明に。今後の動きに注目が集まっています。

 3.アジアの現状

まず韓国は、2026年までにプラスチックごみの発生量を2021年比で10%減らし、プラスチックのリサイクル率は79%と10ポイント引き上げることを目標に掲げています。2025年から使い捨てカップの使用時に保証金(デポジット)として300ウォン(約33円)を上乗せし、ソウルの漢江公園では使い捨てのテイクアウト容器の持ち込みを禁じる計画です。

世界最大の人口大国となったインドは、プラスチックごみの排出も最大規模。2020年に発表されたイギリスの研究によると、世界全体で年間に排出されたプラスチックごみの約5分の1がインドからであったという報告もあります。そんなインドでは、 20227月にプラスチック廃棄物管理規則の規制を強化し、使い捨てプラスチック製品(ストロー、食器、カップなどの特定19品目)が全国的に禁止されることになりました。これにより、首都ニューデリーの街中では規制対象の製品は見かけなくなってきているとのこと。ただ全国で徹底されているわけではないため、浸透にはまだ時間がかかるとの報道もあります。

日本のプラスチック規制はどうなる?

日本も世界の情勢を受け、20224月にプラスチック資源循環促進法を施行し、企業に対しリサイクルしやすい製品設計の推奨や、自治体にプラスチック回収の仕組み整備を促進するなど、さまざまな取り組みを行っています。新しい技術としてバイオプラスチックなどの代替素材も導入され始め、環境負荷の少ない素材への転換が企業や自治体で進められています。

 一方、日本はこれまで長く廃プラスチックを海外に輸出し、処分してきた歴史があります。近年では輸出先の国々などで廃プラスチック輸入を禁止する流れがあり、2017年には中国、2018年にはタイ、ベトナム、マレーシア、そして2019年はインドが禁止するに至りました。そのため、国内でのプラスチックの回収やリサイクルが従来以上に求められており、海外に頼らない仕組みづくりが課題となっています。

廃プラスチックのリサイクルを推進するリバー

国内で廃プラスチックの再資源化が大きな課題となるなか、リサイクラーの存在がより重要視されるようになり、各社でリサイクルの研究開発や技術の向上を目指し、さまざまな取り組みがされています。

関東最大規模のリサイクラーであるリバー株式会社は、20234月に住友化学株式会社と業務提携し、使用済自動車から得られる廃プラスチックのマテリアルリサイクルに向けた取り組みをスタートしました。この提携によって、資源回収から分別、再資源化に至る一連のシステムを構築し、プラスチックリサイクルの事業化を目指しています。

さらに2024年には、リバーの自動車リサイクル事業の中核を担うELV 川島事業所に、課題となっていたプラスチック以外の金属等の異物除去や、比重の軽さによる輸送効率の低さを解決するため、「プラスチック専用破砕機」を導入しました。樹脂選別ラインを有する那須事業所と連携し、自動車リサイクルの精度を大きく向上させることが可能となりました。

リバーは引き続き、循環型社会の実現へ向けた取り組みを進めてまいります。プラスチックリサイクルに関してお困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。




リサイクルについてお困りの際は、ぜひご相談ください。

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