
再生資源物の屋外保管条例 ~千葉市・千葉県の規制強化とリバーの対応~
2025年05月29日

近年、再生資源物を取り扱うスクラップヤードにおける、不適切な保管に起因する火災や周辺環境への悪影響が社会問題となっています。これまで再生資源物は有価物として取引されており、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の規制対象となる「廃棄物」には該当しません。そのため、その保管について直接規制する法令などがありませんでした。
これに伴い千葉市では、2021年に全国初となる許可制の条例を施行しました。2025年には火災リスク低減を目的とした改正が行われ、環境整備が進められています。これに続き、千葉県でも2024年4月から県全域を対象とした規制条例が施行されました。
本記事では、両条例の概要と、これに対応するリバーの取り組みを紹介します。
目次
千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例
千葉市では、金属スクラップなどの再生資源物を取り扱う事業者による火災や悪臭の発生、景観の悪化といったトラブルが増加していました。市街化調整区域を中心に、再生資源物を屋外保管する業者が多数存在していることから、操業に伴う騒音や振動、不適切保管による火災など、近隣住民の生活に支障をきたす状況が問題視されていました。
このような状況を改善するため、千葉市では全国で初めてとなる「再生資源物の屋外保管に関する条例」を2021年11月に施行しました。そして、施行後約9割の事業者が保管基準を遵守するなか火災が継続的に発生している事実を踏まえ、2025年4月には火災発生防止および延焼リスクの軽減を目的とした「千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例施行規則」の改正を実施しています。
条例の概要
敷地面積が100㎡を超える事業場において、再生資源物を屋外保管する場合に市長の許可を受けなければならず、保管基準および立地基準に適合していることが許可条件となります。また、許可の有効期間は5年とされ、継続する場合は更新手続きが必要です。
対象となる再生資源物
①使用を終了し、再生資源として収集された木材、ゴム、金属、ガラス、コンクリート、陶磁器、プラスチックその他これらに類する材質を原材料とするもの(分解、破砕、圧縮等の処理がされたものを含む)およびこれらの混合物
②使用済みのパソコンや家電製品などの電子機器又は電気機器(使用を終了した電子機器又は電気機器であって、電子機器又は電気機器の内部を取り除く処理が行われたものを除く。)が含まれている「雑品スクラップ」
③火災リスクが高い「火災注意品目」
なお、火災注意品目は雑品スクラップに含まれるリチウムイオン電池や潤滑油などが該当します。
対象となる屋外保管事業場
屋外保管事業場の敷地面積が100㎡を超える場合
再生資源物の保管基準
①外部から見やすい箇所に屋外保管事業場である旨の掲示板の設置
②囲いの設置
③保管している再生資源物の周辺の外部から見やすい箇所に屋外保管場所である旨の掲示板の設置
④再生資源物を保管する壁が構造耐力上安全であること
⑤容器を用いずに屋外保管する場合の保管高さが「勾配比1:2」又は「5m」のいずれか低い方を超えないようにすること
⑥汚水が生ずる恐れがある場合、保管場所の底面を不浸透性の材料で覆うとともに、油分離装置及びこれに接続している排水溝その他の設備を設けること
⑦騒音又は振動の防止措置が講じられていること
⑧ねずみの生息やハエ、蚊の発生を防止すること
⑨他の物と区分して保管すること
⑩引火性のあるものは適正に回収して保管すること
⑪保管単位面積を1か所あたり200㎡以下とすること
⑫隣接する再生資源物の保管単位の間隔は2m以上とすること
なお、敷地面積が100㎡を超えない屋外保管事業場でも再生資源物の保管基準は適用されますが、上記①②③の適用は除外されます。
<雑品スクラップの保管基準>
雑品スクラップは火災リスクが高いため、保管場所には以下のような要件が設けられています。
① 屋外保管事業場の周囲に設ける囲いを不燃材料で造ること
② 周囲には不燃材料製の三方を囲う壁を設けること(平置きは不可)
③ 事業場の周囲の囲い、隣接する他の再生資源物の保管場、延焼の恐れがあるものと3m以上の間隔を設けること
④ 屋外保管事業場の入り口から雑品スクラップの保管場までの通路は6m以上の道幅を確保すること(消防活動用)
<火災注意品目の保管基準>
① 周囲には火災発生時に延焼の恐れがあるものを置いてはならない
② 火災注意品目のうち電池類は、他の火災注意品目と混合させず、区分して適正に保管すること
掲示板の表示内容
許可を受けた屋外保管事業場は、保管区画ごとに以下の内容を表示します。
①雑品スクラップの保管場には「雑品スクラップの屋外保管の場所」
②火災注意品目の保管場には「火災注意品目の屋外保管の場所」
なお、雑品スクラップ、火災注意品目を除く再生資源物の保管場には、従来どおり「再生資源物の屋外保管の場所」と表示します。
<屋外保管事業場のレイアウトイメージと掲示板>
※ 参考/千葉市HP「屋外保管事業場のレイアウトイメージおよび掲示板記載事項」よりhttps://www.city.chiba.jp/kankyo/junkan/sangyohaikibutsu/03saiseishigenbutsu.html
立地基準
①住宅等の敷地から100m以上離れた土地に設置すること
②市民生活の安全及び生活環境保全上支障がないものであること
周辺住民等への周知
300m以内の居住者等に対する説明会開催が義務付けられています。
帳簿の整備
屋外保管事業場の許可を取得した事業者は、再生資源物の取引等に関する帳簿を作成し、当該帳簿を3年間保存しなければなりません。
適用除外
廃棄物処理法の許可業者が当該許可事業場において屋外保管する場合は適用されません。(例:一般廃棄物・産業廃棄物処分業許可に係る事業場など)
罰則
無許可での設置・変更違反等については「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の対象となります。
なお、2025年4月時点で雑品スクラップを扱っている事業者は、同年5月末までに「雑品スクラップの屋外保管の有無に関する変更届出書」を提出し、10月1日までに新たな保管基準に適合するよう対応が必要です。雑品スクラップの保管場を新たに設置する場合は、変更許可申請が必要となります。
千葉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例
千葉市における再生資源物の屋外保管に関する全国初の許可制条例を施行したことを受けて、千葉県も県全域での規制強化に踏み切りました。2024年4月1日から施行された「千葉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例(金属スクラップヤード等規制条例)」は、スクラップヤードなどを対象とした新制度です。
この条例では「特定再生資源屋外保管業」について定義付け、その対象となる事業者に対しては県から許可を得ることを義務付けています。
特定再生資源屋外保管業の定義
・金属やプラスチックなど特定再生資源を保管する事業であること
・屋外での保管であること
・特定再生資源の積み上げ作業などに用いる機械を保管していること
対象となる「特定再生資源」とは、廃棄物や有害使用済機器などを除く使用済み製品や製造過程で発生した端材などのことで、金属またはプラスチックを含みます。つまり、従来であれば廃棄物規制の枠外だった有価物も、保管の実態に応じて規制の対象となるのです。
この条例の施行により、千葉県では既存事業者も含めて許可が必要です。許可を受けた後、その許可に係る変更をする場合にも、変更の許可を受ける必要があります。その他、変更や廃業など、事由に応じた届出も必須に。不適正ヤードの一掃や、火災・騒音・景観悪化などの問題抑制が期待されています。
リバーでは県内2つの事業所で許可取得申請中
リバーでは、2024年4月に施行された千葉県の「特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例」にもとづき、市原事業所および船橋事業所の2拠点で、許可取得に向けた申請手続きを進めています。なお、千葉市内に事業所を構える千葉事業所においては、千葉市の条例に基づいて適切な管理と運営を行っているため、「千葉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例」の適用対象外となります。
<リバーの千葉県内事業所の概要>
市原営業所 | 船橋営業所 | |
操業開始 | 2009年 | 1964年 |
敷地面積 | 約22,019.41㎡ | 約9,917㎡ |
取扱物品 |
・使用済み業務用機器 |
・使用済み業務用機器 |
保管物を積み上げる 最高高さ |
5.5m | 3.0m |
処理方法 | 破砕・切断・解体 | 切断・圧縮・解体 |
リバーの両事業所は、これまでも法令を遵守した安全・安心の事業運営を継続しています。今回の許可取得に際しても、保管物の区分明確化や保管高さの管理、施設内の動線確保、環境対策設備の整備など、条例の基準に則った対応を進めています。地域に根ざした再資源化の拠点として、今後も社会への貢献を目指します。
再生資源物の適正管理 ~持続可能なリサイクルに向けて~
千葉市の条例に続き、千葉県でも2024年4月から金属スクラップヤード等規制条例が施行され、再生資源物の屋外保管に対する規制が強化されました。この動きは千葉県以外の自治体にも広がりを見せており、現在では多数の自治体で同様の条例が施行されています。
再生資源物の回収・リサイクルは、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルの実現に重要ですが、適切な保管・適正処理が大前提です。排出事業者は、リサイクル業者選定の際に設備体制や法令の遵守状況を必ず確認し、持続可能な資源循環に取り組むことが求められています。
<関東圏内のスクラップヤード条例一覧 (地方自治研究機構より)>
自治体 |
条例 |
施行日 |
許可制 |
近隣説明 |
廃棄物処理業者等に対する適用除外規定の |
神奈川県 |
平成31年 |
届出制
|
なし |
明確な適用除外規定は確認できない |
|
千葉市 |
令和3年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理法施行規則第13条の2の該当者は適用除外 |
|
千葉県 |
令和5年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理法施行規則第13条の2の該当者は適用除外 |
|
千葉県 |
令和6年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理業者の除外規定なし |
|
茨城県 |
令和6年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理法施行規則第13条の2の該当者は適用除外 |
|
茨城県 |
令和6年 |
許可制 |
あり |
条例の第21条で定める該当者は適用除外 |
|
山梨県 |
令和6年 |
届出制 |
なし |
処分業の許可を受けた事業場内で保管を行う場合は適用除外 |
|
さいたま市 |
令和6年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理法施行規則第13条の2の該当者は適用除外 |
|
埼玉県 |
令和6年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理法施行規則第13条の2の該当者は適用除外 |
|
埼玉県 |
令和7年 |
許可制 |
あり |
廃棄物処理法施行規則第13条の2の該当者は適用除外 |
※2025年4月1日現在
リバーでは、法令を遵守した安全・安心の事業運営を行っています。今後は、これまで以上に安全で適正な再資源化への取り組みを推進し、法令遵守と周辺環境への配慮を第一に、地域社会への貢献とともに、高度循環型社会および脱炭素社会の実現に貢献していきます。
事業活動で排出されるスクラップの処理にお困りであれば、ぜひリバーへご相談ください。法令を遵守した運営を行っているため、安心してご依頼いただけます。
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