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5分でわかる「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)」のポイント

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近年、太陽光発電施設の銅線ケーブルをターゲットとした盗難が多発している。この多発する銅線ケーブル盗難の対策として、金属買い取り業者に売り主の身元確認や取引記録の作成・保存を義務付ける金属盗対策法が6月13日に成立し、6月20日公布された。
本コラムでは、この新法のポイントをわかりやすく解説していきます。

目次

背景/資源価格の高騰と金属盗難の増加

金属盗対策に関する検討会資料によると、令和5年の金属盗難の認知件数は16,276件あり、令和3年の認知件数と比較して2倍以上に増加している。また、被害額ベースでみると銅の被害額は約977,900万円となり、金属盗難被害額全体の約7割を占めている。

金属盗難の被害品のうち、銅線ケーブルの盗難が急増している背景には銅価格の高騰があり、盗んだ銅線ケーブルを金属買い取り業者に転売して利益を得ている実態がある。

古物に該当しない金属くずの買い取りについては、いわゆる金属くず条例が制定されている 17 道府県を除き規制もないため、条例を制定していない自治体では、本人確認されることなく金属くずが売却できるなど、盗品の売却が容易な状況となっている。

このように条例を制定していない自治体が規制の抜け穴になりかねないことから、全国的な規制として金属盗対策法は制定された。


金属盗難対策.png

出典:第1回金属盗対策に関する検討会資料よりhttps://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/scrap/meeting_material.pdf

 

国内銅建値推移.png

出典:一般財団法人日本電線工業会 「国内銅建値(月平均)推移表」https://www.jcma2.jp/toukei/dou/index.html

 


規制の概要

「金属盗対策法」では、盗難を防止する必要性が高い金属を「特定金属くず」とし、特定金属くずの買受けを行う者に都道府県公安委員会への届出と買受け時の相手方の本人確認等を義務付けている。

特定金属くず買受業の届出

・銅及び政令で定める金属を特定金属くずとし、特定金属くずの買受業を営む場合、都道府県公安委員会への届出義務

・届出違反は、6カ月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に該当

買受する相手方の本人確認と記録の作成・保存

・特定金属くずの買受け時の相手方の本人確認義務

・当該本人確認事項等に関する記録の作成・保存義務
取引記録の作成・保管 特定金属くずの買受けを行った場合、買受けに係る相手方の氏名、内容等に関する記録を作成・保存義務
警察への申告 買受けに係る特定金属くずが盗品に由来するものである疑いがあると認めたときの警察への申告義務
その他 特定金属くず買受業を営む者に対する指示、営業停止命令並びに報告徴収及び立入検査等
犯行用具の規制

ケーブルカッター等のうち、犯行使用のおそれが大きい工具の正当な理由なき隠匿携帯を禁止

犯行用具.png

出典:警察庁/第217回国会提出法案「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律案」資料  https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/250307/05_sankou.pdf

 

■「金属くず条例」を制定している自治体

金属盗難の防止を目的とした条例(いわゆる「金属くず条例」)は全国17の道府県で制定されており、事業者に対する規制方法として届出制をとるか、許可制をとるかは、条例によって異なるが、取引相手の本人確認、記録の作成等を義務化している。

なお、金属盗対策法第20条において「この法律の規定は、地方公共団体が、この法律に規定するもののほか、金属くずの買受けに関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない」としている。

条例自治体.png

■施行

この金属盗対策法は620日に公布され、公布後1年以内に順次施行するとされている。


■さいごに

資源価格の高騰を背景とした社会問題として、不適正ヤード業者による騒音・振動や不適切な保管による火災の発生なども深刻化している。

盗まれた金属スクラップなどはコンプライアンス意識の低い不適正ヤード業者に持ち込まれ、金属資源として海外に輸出されている可能性もある。

資源の海外流出を防ぐためにも金属盗難対策、不適正ヤード対策は実効性をもった対応が必要だと思われる。

一方で、金属リサイクラーは、循環型社会の一翼を担う存在とも言え、コンプライアンス意識も高く真摯に金属リサイクルに取り組んでいる事業者も多い。このような事業者が正当に評価され、業界のイメージアップに繋がることを期待する。




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