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ESGは企業の格付けのための指標ではありません。

2017年11月28日

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この記事のポイント

・ESGの格付けが高いからと言って健全な経営をしているとは限らない
・ESGが経営層の意識を変えるような企業が今後生き残るのかもしれない

目次

ESGとは

最近、新聞などでよくESGという言葉を目にする機会が多いでしょう。

ESGとは、「Environmental(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」の頭文字をとったもので、それぞれの分野での適切な取組みが、企業の長期的な成長につながるという考えで、特に投資判断をする際の指標のひとつとして注目されています。
一昔前のSRI「社会的責任投資:Socially Responsible Investment」の発展形ともいわれます。

もともと、環境や社会の要請に応える企業経営で十分な利益を上げることができるのかという疑問もあり、眉唾物と考えられていたこともあります。
ただ最近では事業環境の変化を先取りし、新規事業への進出やリスク回避につながるため、経営戦略としても重要な視点であるという考え方が広がってきています。
企業統治ができていなければ意図した通りの経営にならないし、不祥事なども起こり得えるためです。

国内では、資産残高が多く、長期投資を行う年金基金(GPIF)がESG投資をするということで、メジャーな投資指標として認知されて始めています。

ところが、最近不祥事を起こした神戸製鋼や日産自動車は、GPIFが採用した「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄に含まれ、神戸製鋼が上から二つ目のAA、日産自動車はBBの格付けとなっています。

上場企業が粉飾決算をしていることもあるのですから、ESGの格付けが高い企業が今回のような不祥事を起こしても不思議ではありません。投資家としてはこの指標の難しさを再確認したところかもしれません。

一方、企業側としては今回のことで「ESGは使いこなすべき経営の視点やツールであって、格付けを上げるために策を弄しても意味がない」ということを再認識しなければならないと思います。

ISO14001を形式だけ認証取得した企業と、積極的に経営に取り入れていった企業とでは経営の改善効果が違ったように、ESGについても格付け機関への受け身での対応で終わる企業と、経営層の意識の変化にまで及ぶ企業とでは10年後の競争力にかなりの差が出てくるでしょう。

そのような中で生き残った企業こそが、持続可能な社会を構成していくのかもしれません。

(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)