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リサイクル最前線 そうだったの?リサイクル

巨大な鉄スクラップがどう切断されるのか、覗いてみませんか?

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目次

シャーリング処理(通称:ギロチン)のおはなし

斬首刑の執行装置であるギロチンは、鋭利な刃で一瞬で確実に首を切断することができます。そのため、肉体的苦痛を和らげる人道的処刑方法としてフランスで開発されたそうです。一方の切腹は肉体的苦痛があるだけでなく相当な精神力が必要なのですから、介錯があるとはいえ考え方は相当違いますね。

そのギロチンと形が似ているために、シャーリング処理はギロチンとよく言われます。ところが、鉄スクラップのシャーリング処理で用いられる「刃」はこのように分厚く、一見すると「刃」とは思えないくらい、太いです。

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(↑使用中のシャーリングの刃を外したところ)

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(↑メタルリサイクルのシャーリング)

何しろ、切断しなければならないスクラップが、太くて硬いものも多く、刃も相当に頑丈でなくてはならないのです。刃が下りてくる速度も、一瞬どころか、かなりゆっくりしています。

鉄スクラップを切断する目的は、納入先の電気炉、高炉メーカーの「炉前サイズ」と言われる規格に合わせるためです。1m未満~2mと炉によって違うため、都度設備の設定を変えています。

また、鉄スクラップは日本鉄源協会によりHS、H1、H2、H3、などの品質規格が定められています。H鋼や鉄筋など建設系のものから、プレス抜き後の端材、ドラム缶、ロッカーなど中身によって異なります。しかも実際には、電気炉メーカーによって独自の規格や好みがあります。同じようなものでも買取価格が異なることもあり、納入先のメーカーの微妙な要望に合わせて加工しています。

多くの場合、入出荷等の作業は電磁石を使って行うため、基本的には鉄しか入らないのですが、鉄とそれ以外のものの複合物も入ってしまいます。特に銅が混入すると鉄の製品の品質に悪影響を及ぼすため、例えばH1の銅の含有率は0.2%以下とかなり厳しいのです。
そのためモーター、ラジエーター、ケーブルなど鉄以外の部品を使った電気機械類(=雑品スクラップ)がある場合は要注意です。シャーリング後はそのまま出荷するため、事前にできるだけ取り除かなければなりません。
ところが、鉄スクラップより売却価格が高かった雑品スクラップが、(モノによりますが)中国の輸入規制のために鉄スクラップと同等かそれ以下になってしまいました。当然、雑品スクラップを取り除くインセンティブが下がります。取り除くためには人による「目視」が必要ですし、少々混入に気が付いても、手間を惜しんで目をつぶってしまうこともあるでしょう。そのため、中国の輸入規制以降、鉄スクラップへの銅の混入率が上がっているそうです。

それに困ったことに、鉄は何度もリサイクルされるものですから、だんだん不純物の濃度が上がってしまうので厄介です。

スクラップだから、鉄だから、有価物だからということで、廃棄物の処理委託ほどは気を遣っていない、なんてことはないでしょうか?
リサイクルなのですから、本来分別は重要なのです。買い取ってもらう場合でも、特に電気や機械系のものは、分けて保管するようにしましょう。

取材協力 メジャーヴィーナス・ジャパン、リバー㈱

(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)