
都市鉱山 眠れる宝の山を掘り起こせ!(4-3)
2018年07月20日

廃棄物処理・資源リサイクルリバーグループの広報担当です。今日は「都市鉱山 眠れる宝の山を掘り起こせ!」第三回目です。
目次
海外との関わりを考える 都市鉱山を発掘すべき、その理由とは?
都市鉱山を活用することは、「資源の偏在による不安定な供給」「採掘時の大きな環境負荷」「電子機器廃棄物汚染」といった問題の解決につながると期待されています。
資源の偏在による不安定な供給
たとえば、ハイブリッドカーや携帯電話などに多く使われているレアアース。日本の産業に不可欠なものですが、2008年に世界の供給量の97%以上を占めていたのが中国です。資源の偏在は、輸出国による価格や流通量のコントロールを可能とします。実際、中国は外交カードとして、日本へのレアアース輸出規制を打ち出したことがありました。レアアースに限らず、偏在する鉱物資源を安定調達するためには、都市鉱山をリサイクルすることが重要になってきます。
採掘時の大きな環境負荷
天然の鉱物を取り出す背後では、環境に大きな負荷がかかっています。鉄の場合、1kgを得ようとするとき、約8kgに相当する鉱石や土砂を掘り起こしています。これが金になると、1tの金鉱石を掘り出しても、1g程度の金しか採れません。あまり表に出ない数字ですが、周辺環境に与える影響︎は想像以上に大きいのです。
このように、ある素材を得るために必要とした(消費した)天然資源の量を専門用語で「関与物質総量(TMR)」といいますが、製品や素材の背後に隠れていることから「環境背後霊」とも呼ばれています。鉄とは比べものにならないほど、レアメタルや貴金属の環境背後霊は大きく、採掘場の動植物がかなりの犠牲になっています。
一方、都市鉱山はどうでしょう。電子機器1台に使用されている貴金属やレアメタルの量はわずかとはいえ、天然の鉱山よりもずっと濃縮されたかたちで存在しています。元は環境に大きな負荷をかけて採掘したものだけに、何度も利用することで環境負荷を少しでも減らしていくべきです。
電子機器廃棄物汚染の回避
レアアースなどが使われている電化製品は、使用後はどうなるのでしょう。正式なルートで回収されれば適切に処理されますが、認定を受けていない業者の一部から、中古品や鉄くずなどと一緒に資源として途上国などへ輸出されるものが相当数あります。現地では、そこから銅やアルミなど有価金属を回収しています。電化製品には、鉛、水銀、カドミウム、ヒ素などの有毒物質が含まれているものも多く、十分な設備もない状態で作業をしていることから、健康被害や環境汚染などが起こっています。電子機器廃棄物は、日本からだけでなく、ほかの先進国からも東南アジアやアフリカの途上国へと流出する図式ができていて、世界的な問題となっています。
こうした問題の解消につながるのが、都市鉱山を発掘して国内での再利用を増やすことです。使用済の大型家電、自動車、建設資材は国内での循環が根付いていて、再資源化率7~9割台にのぼります。それに対し、国が認定した小型家電の回収量は2016年度で約6・8万t、目標としていた14万t(回収率20%)には遠く及びませんでした。自治体によるゴミ収集のほか、認定業者による回収や、商業施設へのボックスの設置などを行っていますが、小型家電のリサイクル方法の認知度はまだあまり高くないのが現状です。
また、軽トラックで街中を巡回したり、チラシなどで小型家電の無料回収を呼びかける違法業者の存在も影響しています。使用済小型家電の約2割はこのような業者に回収され、適切に処理されないまま多くが輸出されています。
一方、企業が小型家電を排出する場合は、認定事業者やリサイクルを適正に実施できる事業者に引き渡す義務があります。しかしこのような問題はあまり認知されていないため、都市鉱山を国内循環させることはまだ道半ばです。
監修 原田幸明
特定国立研究開発法人 物質・材料研究機構 名誉研究員/一般社団法人サステイナビリティ技術設計機構 代表理事