
海洋生分解性プラスチックの普及で海洋プラ問題は解決する?
2019年05月20日

この記事のポイント
・経済産業省が「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」を作成した
・リサイクラーから見た生分解性プラスチックが普及することによる影響
・生分解性プラスチックに関するライフサイクル提言
目次
海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ
2019年5月7日に、経済産業省が「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」を作成しました。https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190507002/20190507002.html
出典:経済産業省
海洋生分解性プラスチックとは、海洋へ流出する前に土壌等の自然環境下で生分解される素材、又は仮に海洋へ流出しても環境への負荷が小さい新素材のことを言うそうです。今回作成されたロードマップは海洋プラ問題への対策です。
プラスチックごみの適切な回収を大前提としながらも、それでも海洋に流出する場合に備えて、海洋生分解性プラスチックを普及させよう、ということです。新素材の開発と普及、輸出を視野に入れているのですから、産業政策でもあります。
しかし、良いことだと思っても、新しいことを始めると必ず環境面での問題が発生するものです。リサイクルの分野で心配なのは「新種のプラスチックの混入につながる」という点でしょう。
ロードマップでも、課題として挙げられています。
[課題]
生分解性プラスチックは分解しやすい性質の反面、再生樹脂として再利用する点については不向きであるため、将来的に海洋生分解性プラスチックの流通が相当程度拡大した場合には、非分解性プラスチックと混合されて回収されることにより現行のリサイクルシステムに影響を与える可能性がある。
生分解性プラスチックが普及することによって、マテリアルリサイクルが困難になって、熱回収のウェイトが高くなったのでは困ります。これ以外にも、安定型産業廃棄物として分解しない前提で埋立処分する場合でも、悪影響があるでしょう。
この課題に対してロードマップでは対策も挙げられています。
[対策]
汎用プラスチックと生分解性プラスチックを分別して回収するための生分解性プラスチックに関する表示を整備し、分別回収を可能とするとともに、分離回収技術の開発も検討する必要がある。さらに、分解しやすい性質を生かしたガス化による有効活用等、生分解性プラスチックの資源循環も検討する必要がある。なお、国内の生分解性プラスチックに関する表示については、策定されたISOを踏まえ、日本バイオプラスチック協会等による識別表示制度を構築していく。
生分解性プラスチックのリサイクルはどうなる?
生分解性プラスチックにも種類が色々あるのですが、一括して回収して、コンポスト(=CO2排出)に回すのでしょうか。混合されたものについて「分離回収技術の開発も検討する」と書かれていますが、そんなことせずに、分けずにRPF化が妥当という判断にならないとも限りません。
コンポストもRPFも、リサイクル業界としては一応の正解になると思います。しかし、使用済みのプラスチックは、熱回収率が相当高い場合を除き、地中保管をしてカーボンの固定をすべきではないかと思っています。発電するなら、再生可能エネルギーのほうが優先です。火力発電所でのCCS(二酸化炭素回収・貯留)もよいですが、技術的にはプラの地中保管のほうが容易なのではないでしょうか。保管にあたっては、生分解性と非分解性プラを混在させても問題ないか検証し、さらに生分解性プラの分解抑止ができれば文句なしです。
植物を原料として生分解性プラを生産し、使用後の物を地中保管すれば、地球の二酸化炭素を減らすことになります。環境保全、環境対策はよくてプラスマイナスゼロですが、この取組であれば環境の改善、カーボンマイナスになります。
“生分解性プラを製品材料として使用し、使用済み品のプラを地中保管する”もしかしたら、これがこれからの企業の社会貢献活動の一つになるかもしれません。
(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)