
企業が環境への取り組みを進める際の指針となるのか!?|環境省が進める「環境サステナブル企業」とは。
2019年10月02日

この記事のポイント
・環境省は、2019年7月にESGのE=環境について企業を評価する軸を公表した。
・環境要素を企業経営などに戦略的に取り組んでいる企業を評価し、投資家の判断材料として活用してもらおうという狙いがある。
・各企業がどのような視点、軸で環境への取り組みを進めるべきかの指針になることも期待されている。
目次
”ESGのE=環境”の評価軸
ESG投資の機運が高まる中、環境省は2019年7月8日に、ESGのE=環境について企業を評価する軸を公表しました。
http://www.env.go.jp/press/106972.html
出典:環境省
この評価軸を活用し「環境サステナブル企業=(環境要素を企業経営などに戦略的に取り組んでいる企業)」を評価し、投資家の判断材料として活用してもらおうという狙いがあるようです。同時に、各企業がどのような視点、軸で環境への取り組みを進めるべきかの指針になることも期待しているそうです。
評価軸には大きく分けて4つあります。
- リスク・事業機会・戦略
- KPI
- ガバナンス
- 加点要素
「環境情報を企業価値評価に活用するための考え方に関する報告書 」
出典:環境省
などで解説されている内容を、読みやすくなるように、短くまとめましたのでご覧ください。
1. リスク・事業機会・戦略
将来的に、環境課題が自社にとってリスクや事業機会になることを把握し、それに向けて中長期的な計画を立てて戦略的に経営をしているかを評価します。2015年版のISOの「リスク及び機会」にしっかり取り組んでいれば問題ないはずです。検討プロセスや計画の具体性、経営への統合レベルなどで評価がされます。
2. KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)
環境課題に取り組む姿勢として、単なる抽象的な掛け声ではなく、数値目標(KPI)を設けているかを評価します。KPIを設定するだけではなく、野心的な内容か、進捗は順調かなどで評価がされます。
3. ガバナンス
環境課題に組織としてどのように取り組んでいるかを評価します。経営層の認識と社内の組織体制、情報開示や投資家とのコミュニケーション、取組状況のモニタリング・監査・教育・各種認定取得などの状況を踏まえて評価されます。
4. 加点要素
以上の他に、SBT、TCFD、RE100などの先進的な取り組みをしているようであれば、加点評価がされます。
なお「環境課題」とは、気候変動問題だけでなく、資源循環や化学物質管理、生物多様性など、あらゆる環境問題について各社が取り組むべき課題のことです。
近年は、ESGやSDGsというキーワードが象徴するように、これからの企業の課題は環境問題には限らないという認識が広がってきました。例えば企業が発行するレポートも、環境報告書→CSRレポート→サスティナビリティレポート→統合報告書のように、領域が拡大し、経営との統合が進んできたと思います。この動きと呼応するように日経エコロジーは日経ESGに名称変更し、売れ行きも好評とのことです。
しかし今回、ESGの中のEだけを取り出して評価軸を公表されたのは、省庁間の壁を破れず、所管外のことにタッチできなかったからでしょうか。Eについては、「投資判断等を行う上でどのように理解すればよいのか、よく分からない」という投資家からの声を受けたという経緯はあったようですが、本来であればE、S、Gセットの評価軸が欲しかったところです。新大臣には他省との合同委員会をもっと積極的に開催するなどして、リーダーシップを発揮し、省庁横断的な取組を進めていただけるよう期待したいところです。
(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)