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安くてかわいい洋服の購入が環境破壊につながる?|アパレル業界の環境負荷について考える。

2020年01月09日

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この記事のポイント

・アパレル業界の環境負荷が注目されている。
・アパレル業界に関連して排出される温室効果ガスは、世界全体で排出される量の8%にも及ぶ。
・消費者として大切なことは服の購入による環境負荷を考えるということ。

目次

フードロスの次はアパレル業界の排出する温室効果ガス?

国連による発展途上国への食品援助の量が約300万トン。一方、日本国内で廃棄される食品(フードロス)の量がその倍近い約600万トンあるそうです。このようなショッキングな数字によりフードロス問題が注目されていますが、次に注目されるのはアパレルかもしれません。

ファッションの測定:世界のアパレル・靴業界が環境に与える影響の実態 Measuring Fashion: Insights from the Environmental Impact of the Global Apparel and Footwear Industries studyというレポートによると、アパレル業界に関連して排出される温室効果ガスは、世界全体で排出される量の8%にも及ぶのだそうです。これはEU全体のCO2排出量に相当します。

しかも、使用する繊維などの素材、消費動向、製造場所が変化したこともあり、2005年から2016年にかけては35%増加しました。ここでは名指しはしていませんが、つまるところファストファッションの普及により、中国や東南アジアで衣服が大量に低コストで生産・提供されるようになったことが大きいのでしょう。このままいくと2030年には2016年比でさらに49%増加する見込みで、これは現在のアメリカの排出量に匹敵することになります。

問題は温室効果ガスだけではありません。製造の各工程、輸送時の化石燃料の使用(資源枯渇)、水の使用、有害物質の排出、健康被害も悪化すると予測されています。

一方で、1人当たりの衣服の購入量は、世界平均で年間11.4㎏、2400㎞の距離を自動車で移動するのと同程度のCO2排出量と同量だそうです。さらに経済産業省のデータでは、国内で不要となった服が年間100万トンも廃棄され、そのほとんどが焼却されるだけで、リサイクルされるものは1割もないそうです。これに対し、アパレル業界としての対策が3つ挙げられています。

1.エネルギー消費

特にアジア地域での電力と熱の利用に伴うCO2の排出量を減らす必要があるということです。具体的には、効率化と、再生可能エネルギーの導入が挙げられています。

2.リデュース

生産や供給プロセスでのデジタル化や技術革新によって、原材料や廃棄物の削減、エネルギー効率の向上が見込めます。消費プロセスでも、レンタル・回収モデルなどの展開により、製品の使用期間が延長でき、新製品の生産ニーズが減らせます。

3.素材の選択

綿などの再生可能な素材や、リサイクル素材の採用により、環境負荷を減らすことが出来ます。同時に、ファストファッションの消費量の削減も必要とされています。

消費者としては、「安いから」、「流行だから」と言って安易に衣服を買うのではなく、良いモノを補修してでも長く使う、廃棄する場合でも古布としてリサイクルに回す、という消費行動が必要です。服の購入が環境負荷につながるという意識を持ち、古き良きライフスタイルというより、これからの新しいライフスタイルとして受け入れていくべきなのでしょう。少し前になりますが、国連も「ファッションチャレンジ」と銘打って、消費者による持続可能なファッションを呼び掛けています 。

アパレルメーカーの中には、消費者にそのような商品やサービスを提案する取組みを進めているところもありますので、そのようなメーカーを支持することも必要でしょう。

(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)