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昨今問われるESG情報。とりわけ日本企業の人権に対する意識や取り組みの今を考える。

2020年04月04日

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この記事のポイント

・注目が集まるESG情報のS社会(Social)において、特に日本企業の人権に対する意識や取り組みは、諸外国と比べて遅れていると言われている。
・人権の問題を考えるうえでは、個別のテーマに取組む前に、そもそもの考え方を理解することが重要。
・2016年に設立されたCHRB(企業の人権への取り組みを格付けする機関)の評価対象となるテーマには、取引先の取組状況も把握する「人権デューデリジェンス」も含まれており、取引先から人権問題への対応を求められる可能性がある。

目次

日本のSocialは遅れている?

昨今注目が高まる「ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))」。とはいえ、S(社会(Social))の部分の対応方法は多くの企業が模索しているのではないでしょうか?特に、日本企業の人権に対する意識や取り組みは、諸外国と比べて遅れていると言われています。学校教育の現場でも、抽象的で試験問題を出しにくい人権の問題については、教科書も、先生も、生徒も力が入っていないように感じます。このような点数化しにくい「考え方」を学ぶことこそが、これからの教育で最も求められることだと思うのですが、、、その話題はここではおいておきましょう。

比較的最近の資料としては、2020年2月27日に外務省から「ビジネスと人権」というウェブページ がアップされています。

外務省のページということもあり、国際的な動きがまとまっています。各国の政府と企業が取るべき対策も掲載されています。人権というと、セクハラ・パワハラという個別案件でしかなく、それ以外は海外の問題と思ってしまう向きもあるようですが、そうではありません。

人権の問題を考えるうえでは、個別のテーマに取組む前に、そもそもの考え方を理解することが重要です。例えば、世界人権宣言の第一条にはこのように記載があります。

すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。

この考え方に則り、社会のあらゆる場面で行動することが求められるのです。当然のことながら幅広い取り組みが必要で、精神・心の問題でもあるので深くて、難しいと思います。

では具体的に何を守ればよいのかと、項目だけでも引用、列挙しようとすると膨大な数になりますし、一カ所にまとまっているわけではありません。例えば世界人権章典 が挙げられます。

さらに企業の対応としては、労働関係が重要です。国際労働機関(以下ILO:International Labour Organization)のこのウェブページ も分かりやすいと思います。

「国際労働基準」の項目を挙げると、結社の自由、強制労働の禁止、児童労働の撤廃、雇用・職業の差別待遇の排除といった基本的人権に関連するもの、三者協議、労働行政、雇用促進と職業訓練、労働条件、労働安全衛生、社会保障、移民労働者や船員などの特定カテゴリーの労働者の保護など、労働に関連するあらゆる分野、だそうです。

国際労働基準のウェブページへ>>

ILOの条約への批准数がOECD(経済協力開発機構:Organisation for Economic Cooperation and Development)諸国の平均批准条約数が75であるのに対し、日本は49しかありません。数の問題ではないとはいえ、取組みが後ろ向きすぎるとして批判を浴びることもあります。しかし、グローバルに事業展開する企業としては、いつものことですが政府の動きに関わらず対応が求められています。

まず、人権問題はSDGsに含まれています。さらに2016年にはCHRB (企業人権ベンチマーク:Corporate Human Rights Benchmark)という企業の人権への取り組みを格付けする機関ができ、注目を浴びつつあります。

評価対象となるテーマには、取引先の取組状況も把握する「人権デューデリジェンス」も含まれています。もしかすると、海外との直取引がない、中小企業だから関係ないと思われている方がいるかもしれませんが、今後は取引先から人権問題への対応を求められる可能性があります。

企業における重要な「社会(Social)」とは何か? “会社として当然すべきこと”として、意識せずに対応できている部分もあるはずですので、一度「人権」の切り口から自社の状況を把握されてはいかがでしょうか。

CHRBによる企業のランキングなどはこちら>>

なお、国内向けには法務省の人権擁護局 で情報が発信されていますが、この中で「強調事項17項目」として具体例が挙げられています。項目だけ列挙しますが、詳しくはウェブページ をご覧ください。

  1. 女性の人権を守ろう
  2. 子どもの人権を守ろう
  3. 高齢者の人権を守ろう
  4. 障害を理由とする偏見や差別をなくそう
  5. 同和問題(部落差別)を解消しよう
  6. アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう
  7. 外国人の人権を尊重しよう
  8. HIV感染者やハンセン病患者等に対する偏見や差別をなくそう
  9. 刑を終えて出所した人に対する偏見や差別をなくそう
  10. 犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう
  11. インターネットを悪用した人権侵害をなくそう
  12. 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
  13. ホームレスに対する偏見や差別をなくそう
  14. 性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう
  15. 性自認を理由とする偏見や差別をなくそう
  16. 人身取引をなくそう
  17. 東日本大震災に起因する偏見や差別をなくそう

また、法務省が無料で講師を派遣してくれるようですので、参考にしてください。

法務省のウェブページはこちら>>

(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)