
サーキュラーエコノミー(循環経済)を起点にバージンプラスチックへの課税を考える。
2020年09月04日

この記事のポイント
・日本のプラスチック政策は、法規制が中心となり成り立っている。
・EUが掲げるサーキュラーエコノミーは、経済的視点を有しており経済的インセンティブにより、企業の行動をあるべき方向に誘導するもの。
・「MOTTAINAI」を掛け言葉に終わらせないためにも「プラスチックプライシング」を。
目次
経済的手法の活用を
日本のプラスチック政策は、廃棄物処理法と各リサイクル法の中に組み込まれており、それらの規制を中心に成り立っています。すべきこと、してはいけないことを定めて、行動をコントロールする政策で、このような手法を「規制的手法」と呼んでいます。計画作成+実績報告による自主的取り組みの促進、調査研究、広報・啓発活動は行われていますが、基本的には法規制の範囲にとどまります。国が用意した制度に従っていればよく、民間による創意工夫に富んだ改善やレベルアップが行われる余地は限られています。
一方、EUが掲げるサーキュラーエコノミーがこれまでの日本の政策と大きく違うのは、エコノミー=経済的視点の有無だと思います。経済的インセンティブにより、企業の行動をあるべき方向に誘導しますが、具体的な方法は当事者に任されています。これを「経済的手法」と言います。(規制的手法を用いていない、ということではありません。)
日本でも、自治体条例による産廃税(主に埋立処分に課税)や、レジ袋の有料化、各種の補助金がありますが、まだまだ小粒です。廃プラの2R推進やポイ捨て対策には、強力な手法が採用されずに残っています。
最も直接的で広範囲に効果がある方法は、バージンプラスチックの使用に課税する、いわば「プラスチックプライシング」でしょう。カーボンプライシングのプラスチック版です。設定額によりますが、プラスチック価格の上昇に反比例して使用量が減少することが見込めますし、代替素材としての使用済みプラスチックや、ReduceやReuseが進むはずです。結果的にこれまで廃棄物だった廃プラスチックの多くが有価物となり、廃棄物処理法の規制から外れるため、回収ルートも便利で多様化するでしょう。既に一部のペットボトルなどがそうですが、回収に協力すればポイントが付与されるようになれば、もったいなくてポイ捨てする人も減るはずです。
税収は、バージンプラスチックの使用料を減少させるために、代替素材の開発や販売補助金、3R技術の開発や事業補助金などに使います。課税により推進される3Rを、さらに活発化させます。
その他にも、原油価格が下がるとバージンプラスチックの価格も下がり、その結果リサイクルが滞ることがよくあります。それを防ぐために、プラスチックの最低販売価格を設定してもよいかもしれません。
実施に際しては、価格設定をどうするのか、国内産業への影響、納税義務者を誰にするか、輸入品への課税をどうするのかなど検討課題はあります。それでも、2Rの推進が課題となる中、MOTTAINAIを掛け言葉に終わらせずに、具体的な政策に昇華させるための手法として、バージンプラスチックへの課税を検討する意味はあるのではないでしょうか。
(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)