
サーキュラーエコノミーってなに?
2021年12月27日

近年、SDGsという言葉が広がると同時に、サーキュラーエコノミーという考え方も注目されつつあります。資源を廃棄するだけでなく再利用して循環させるしくみ、サーキュラーエコノミーについて解説します。
目次
サーキュラーエコノミーとは循環型経済のこと
世界的な人口の増加に伴い、資源やエネルギー、食糧需要が増大し、同時に廃棄物量も増加することが世界的な課題となっています。
さらに気候変動などの環境問題の深刻化も重なり、これまでの経済活動から、持続可能な社会へと移行する必要性が叫ばれてきました。
そこで、従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに加えて、資源を消費することを抑え、今あるストックを有効活用しながら、サービス化を通じて付加価値を生み出す、サーキュラーエコノミーという考え方が生まれました。
リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー
これまでの私たちの経済活動は、資源やエネルギーを使って製品を大量生産、大量消費し、不要になった製品は自然界に廃棄されるという流れでした。
このような経済は、生産から廃棄まで直線的に流れるため、リニア(直線的)エコノミーと呼ばれています。
それに対し、生産、消費、廃棄のそれぞれの段階で、円を描くように循環させることで、資源の消費や廃棄を削減し、さらにその循環の過程で付加価値を生み出すことを両立しようという考え方が、サーキューラー(循環)エコノミーです。
引用:資源循環政策の現状と課題(経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課)
海洋プラスチックごみ問題が大きなきっかけに
このような動きは、国際的に話題となった海洋プラスチックのごみ問題も、大きな後押しとなりました。
海岸に漂着する大量のごみの多くはプラスチック類で占められ、海洋生物への悪影響が懸念されています。
マイクロプラスチックは北極や南極でも観測され、かなり広範囲に影響を与えていると言われているのです。
2019年に日本で開催されたG20では、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする目標が掲げられました。
これを受け策定した「プラスチック資源循環戦略」では、再生素材やバイオプラスチックなどの代替素材の利用促進へ動きを進めています。
これは、新しいビジネスモデルの育成へとつながることが期待されています。
動脈産業と静脈産業の役割
サーキュラーエコノミーの実現においては様々な課題がありますが、中でも重要なのが、動脈産業と静脈産業の連携です。
動脈産業とは、製品を生産する産業で、自動車メーカーなどがその代表です。
一方静脈産業とは、消費が終わった製品を廃棄処理したり、リサイクルしたりする産業のことを指します。
両方がうまく機能することで経済や社会が成り立っていますが、サーキュラーエコノミーの実現においても、それぞれの分野で努力が必要です。
例えばメーカーが製品を生産する際に、リサイクルしやすい形で企画することなどが考えられます。
またリサイクラーも、あらゆる製品の処理やリサイクルを可能にするよう技術開発する必要があります。
また、両者が連携し、生産から廃棄・再利用までの工程を全体として見ることができれば、サーキュラーエコノミーの実現へと近づくでしょう。
サーキュラーエコノミーへの取り組み事例
日本国内でも、サーキュラーエコノミーへの取り組みを始めている企業がありますので、その一部をご紹介します。
【日本特殊塗料株式会社】
日本特殊塗料株式会社では、ユニクロが回収した古衣料を、自動車用防音材に加工・製品化し、各種自動車メーカーに納入しています。
この会社は古衣料のマテリアルリサイクルの分野においてはトップメーカーであり、自動車メーカーはもとより、各方面からその取り組みに注目が集まっています。
参考:https://www.nttoryo.co.jp/media/ap-group/a46
【株式会社ブリヂストン】
株式会社ブリヂストンでは、タイヤの原材料の一つであるカーボンブラックを、廃タイヤを熱分解して回収した再生カーボンブラックで代替し、これを用いたタイヤを商用化し、米国市場で販売しています。新品のカーボンブラックと同等の性能を有しながら、新品対比で製造時のCO2排出量を約81%削減することができます。
参考:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2019112102.html
【株式会社KDDI総合研究所】
株式会社KDDI総合研究所は、使われなくなった家具やインテリアなどを3Dデータ化し、サイバー空間上に集約することで、新しい価値を持つ製品への再生を手軽に行えるようにするプロジェクト「GOMISUTEBA」を開始しました。これは不要になったものに付加価値をつけて再生し、より価値の高いものへと生まれ変わらせる「アップサイクル」を促進する取り組みです。
参考:https://future-gateway.jp/project/gomisuteba/
まとめ
国内外で、サーキュラーエコノミーへの移行が促進される一方で、短期的には企業や消費者にとって利益になりにくいのが課題です。
ただ、世界の流れからも、企業が環境配慮等の社会的責任を負うことは必然の流れになっているため、コストとしてとらえるのではなく、将来の新たな価値の創出として前向きにとらえることが求められています。