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リチウムイオン電池の発火原因は? その危険性と対策を紹介

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近年、リチウムイオン電池を使用した製品が増加したことで、廃棄物として処理される過程で火災などの事故が多発するようになりました。そこで、この記事ではリチウムイオン電池による事故の実態や発火のメカニズムなど、どのような危険が潜んでいるのか、そして今求められている対策について解説していきます。

目次

リチウムイオン電池とは何か?

あらゆるものに用いられる小型二次電池

電池には使い切りの電池と、充電によって繰り返し使える二次電池があり、近年ではあらゆるものに小型二次電池(充電式電池)が使用されるようになりました。種類も様々で、ニカド電池、ニッケル水素電池、小型シール鉛蓄電池、リチウムイオン電池といったものがあり、再利用促進のために以下のようなリサイクルマークが付いているのが一般的です。

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▲リサイクルマーク


なかでもリチウムイオン電池は従来の電池に比べ、軽くて出力が大きく、素早く充電できるという特徴があり、幅広い用途で活用されています。身近なものでは、携帯電話やPCなどのバッテリーが代表的ですが、EV(電気自動車)や産業用ロボット、データセンターの蓄電モジュールや建設機械など、社会インフラに関わるものにも多く取り入れられ、今や欠かせない存在になっています。

【家電量販店における製品の販売量及び使用電池調査結果に基づく国内市場投入量の推計結果】

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※環境省「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」より引用

令和2年度の経済産業省の調査によると、電源装置(モバイルバッテリー)、電気掃除機、電気かみそり、ワイヤレスイヤホンについては、リチウムイオン電池を含むを使用した製品が300万台以上も国内市場に投入されていると推計されています。これらには鉛蓄電池やアルカリ蓄電池も含まれているため、リチウムイオン電池だけの数値ではありませんが、今や小型家電の多くにリチウムイオン電池が使用されていることを踏まえると、相当量が市場に出回っていると推測できます。

使用済みのリチウムイオン電池の排出量も膨大に

また前出の調査では、使用済みリチウムイオン電池の2019年の排出個数は6,616万個、排出重量にすると16,094tと推計されており、市場投入量に比例して膨大になっていることがわかります。さらに電気電子機器がごみ収集時に混入している割合については、調査対象の市区町村には30.8%と非常に高い自治体もあり、混入したリチウムイオン電池が起因とする発火等の危険性が懸念されています。

一方で、リチウムイオン電池の危険性については認知度が低いことも明らかになっています。実際、リチウムイオン電池の特徴に関するアンケートでは「強い衝撃が加わると、発熱・破裂・発火等の危険性がある」という項目に対し、「わからない」とする回答が4割弱も占めるという結果に。リチウムイオン電池の市場投入量の多さを踏まえ、その危険性や適正な処理方法についてますます周知の必要性が高まっていると言えます。

なぜリチウムイオン電池は火災事故の原因になるのか?

リチウムイオン電池のメカニズム

リチウムイオン電池はプラス極とマイナス極、それらを分けるセパレーター、そしてその間をうめる電解液から構成されており、プラス極とマイナス極で蓄えたリチウムイオンを移動させることでエネルギーを貯蔵、放出することができます。しかし、外圧などにより、充電状態の電池に含まれる 2つの電極物質が直接接触すると、化学反応によって酸素と熱が発生し、可燃性のある電解液を媒介することで発火につながります。

特に問題になっているのが、廃棄物処理での発火です。廃棄物処理のプロセスにおいては、機械で圧迫されることなどにより内部で通電することが多く、電池単体では発火しなかったとしても、破損箇所や安全弁から可燃性の溶剤が噴出すると、破砕機の摩擦で生じる火花などに引火する可能性もあります。また、放電しきっていないリチウム電池は、電気回路に湿気や水分が侵入すると通電して発火につながる恐れもあるため、屋外に放置することも非常に危険とされています。

廃棄物処理プロセスにおける発火事故

令和3年度の環境省調査によると、二次電池に起因した収集車両や破砕施設の火災等の発生状況は「発生していない」が 1,145 市区町村(66%)、「発生している」は 255 市区町村(15%)という実態が明らかになりました。また、火災等が発生している収集区分は「不燃ごみ」が 67.1% と突出して多く、最も注意が必要な区分であることがわかっています。次いで「粗大ごみ」20.8%、「可燃ごみ」18.4%が多く、具体的な発生状況としては、廃棄物処理施設での解体・破砕作業中が 170 件(66.7%)、収集車両が 117 件(45.9%)であり、不適切な排出によって廃棄物処理プロセスに多大なダメージを与えていることがわかっています。

【二次電池に起因した収集車両、破砕施設の火災等の発生状況】

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※環境省「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」より引用

特に注意したい「モバイルバッテリー」

火災事故の原因とみられる品目として、もっとも多いのがモバイルバッテリーです。スマートフォンを始め多くのモバイル端末の充電に利用されているモバイルバッテリーですが、廃棄方法が分からないせいか、不燃ごみや可燃ごみとして捨てられてしまうことが多いようです。

モバイルバッテリーは小型家電に分類されるため、各自治体の指定している方法で適切に廃棄する必要があります。家電量販店やホームセンター、携帯電話のキャリアなどでも引き取ってもらえる店舗があるので、相談してみるとよいでしょう。

【二次電池に起因した火災等の原因品目】

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※環境省「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」より引用

 希少金属が含まれるリチウムイオン電池

リチウムイオン電池の適正処分は火災を防止するためにも重要ですが、資源回収の観点からも非常に重要です。リチウムイオン電池などの充電式電池は、資源有効利用促進法により、小型二次電池製造業者事業者と小型二次電池を使用する製品の製造事業者、そしてそれらの輸入販売事業者に、自主回収と再資源化が義務づけられています。不要になった小型二次電池からはカドミウムやコバルト、ニッケルといった有用な金属が取り出され再資源化されるため、適切な方法で処分することは、資源循環へ寄与することにつながるのです。

リチウムイオン電池による火災を防ぐための対策とは?

各自治体で行われている工程ごとの対策

リチウムイオン電池の普及に伴う火災事故を防ぐためには、住民への正しい廃棄方法の周知に加え、廃棄物処理を担う業者の工夫も求められています。以下の図は対策を実施している自治体に対して環境省が行ったアンケートをもとに、各工程での対策や課題を整理した図です。

【市区町村における廃棄物処理フローと発煙・発火対策の観点との関係】

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※環境省「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」より引用

住民への周知・啓発の徹底

住民がリチウムイオン電池等を適切に排出できるように、ホームページやチラシ、広報誌、SNSなどで分別方法などを周知しています。その際、発火の危険性を伝えるために、処理施設で実際に発火した際の写真を引用したり、消防局と連携してリチウムイオン電池の発火実験をテレビで放映するなど、様々な工夫を実施しています。

② リチウム蓄電池等の排出先の工夫

リチウムイオン電池を捨てたいときに適切に捨てられるよう、排出先でも工夫がなされています。例えば、モバイルバッテリーなどの蓄電池を取り外せない製品を「充電式電池の取り外しが困難な電化製品」という区分で収集を実施したり、ごみ集積所へ排出する際、透明な袋に入れて「キケン」と表記してもらうことで、発火などの危険性を判別できるようにしている自治体もあります。

③ 収集運搬車両への混入・運搬中の発火・延焼防止

収集運搬時の発火や延焼を防ぐために、ごみ投入前の確認や混入したリチウムイオン電池等が発火要因となる衝撃を避けるなどの対策が行われています。混入していた場合は違反ステッカーを貼り、収集を行わないことで排出者に注意喚起するほか、万が一に備えて消火器や消火剤を車両に搭載し、迅速に消火活動を行えるようにしている事例もあります。

④ 処理施設における前処理の徹底

処理施設では破砕機への混入を防ぐために手選別を行っています。一方で、手選別から機械選別に変更したことで、約3倍のリチウムイオン電池が分別されたという例も。リチウムイオン電池は磁力選別が困難であるため、風力選別やロールスクリーンの導入によって選別の精度を上げる工夫もなされています。

⑤ 処理施設における発火検知・延焼防止

万が一発火が発生した場合に備え、発火件数が多い保管場所や破砕機出口、コンベヤなどを中心に発煙検知器を設置したり、破砕物を搬送するコンベヤベルトを難燃性のものに交換するなど工夫がされています。また、消火活動が迅速に行えるよう、既存の水道管を分岐させ、消火用のホースを設置している例もあります。

以上のように、各自治体での様々な工夫により、大規模な火災事故の件数は減少傾向であるものの、リチウムイオン電池の混入件数や小規模の発火件数は減っておらず、不適切なごみ区分への排出を減らす観点では課題が山積しているのが現状です。

リチウムイオン電池の適正処分で安全に再資源化

リチウムイオン電池内蔵製品を廃棄する前には必ず確認を!

リチウムイオン電池が原因となる火災事故を防ぐためには、排出者が正しく廃棄することが何より重要となります。特に火災の原因となることの多いモバイルバッテリーや加熱式たばこ、コードレス掃除機などは注意が必要です。

不要になった電化製品を処分する際には、まずはその品目がどの区分に該当するのか、自治体の資料やホームページで確認することを習慣にするとよいでしょう。廃棄物処理の運搬や施設での安全のため、そして貴重な資源の活用のためにも、適正処分の徹底にご協力をお願いいたします。

小型家電リサイクル認定事業者のリバーグループ

今後ますます排出が増加するであろうリチウムイオン電池ですが、適正処分には排出者と処理施設それぞれで努力や工夫が求められています。総合リサイクラーであるリバーグループは、国から小型家電のリサイクル・再資源化を認められた「小型家電認定事業者」です。携帯電話をはじめ、様々な小型家電の回収から処理、再資源化までをフロー化し、確実にリサイクルを実施しています。

ご家庭にある使用済み小型家電は、各自治体指定の方法で廃棄する必要がありますが、法人様で大量に小型家電を排出する際は、リバーグループへご相談ください。リバー熊谷事業所・東松山事業所では、携帯電話やスマートフォン、機密性の高いOA機器やサーバー、ATMなどの適正処分や、HDD内のデータ消去サービスも行っています。

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