
フロン行程管理票って、何? ~機器廃棄時のフロン回収のポイント
2024年04月03日

2020年(令和2年)4月1日に改正法が施行された「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(「フロン排出抑制法」)。旧法にはなかった書類や保存義務の記載が追加され、機器の点検から廃棄、フロン回収にいたるまでの管理がより厳格化されました。
本ページでは、特に「フロン回収行程管理票(フロン行程管理票)」を用いた行程管理について、関係者ごとに発生する業務や保管すべき書類などをわかりやすくまとめました。
目次
POINT
- フロン類の適正な回収には、「フロン回収行程管理票(フロン行程管理票)」を用いた管理・記録が必須。
- 全体のフローや使用する書面は取次者の数などで変わるため、事前に全体行程を確認することが大切。
フロン排出抑制法の対象品目(例)
フロン排出抑制法の対象となる製品(第一種特定製品)は、主に以下です。
・業務用エアコンディショナー(エアコン)
・冷蔵機器
・冷凍機器
逆に、以下のような製品は対象品外となります。
・家電リサイクル法対象の冷蔵庫・冷凍庫、エアコン
・自動車リサイクル法対象のカーエアコン
●フロン排出抑制法の対象となる製品・対象外の製品
フロン類回収のフローと行程管理の考え方
■フロン類の回収~再生・破壊、機器処分の主な関係者
フロン類回収の行程では、主に以下の関係者間で行程管理票などをリレーしていくことになります。
ユーザー |
第一種特定製品の廃棄等を行おうとする第一種特定製品の所有者など |
|
取次者(引渡受託者) | 廃棄等実施者より、第一種特定製品に充填されているフロン類のフロン充填回収業者への引渡しを委託された者 | |
フロン充填回収業者 | (設備業者、解体業者、産廃業者、リサイクル業者など) | |
機器の処分業者 (引取等実施者) |
フロン類を充填・回収することを業として行う者として、都道府県知事の登録を受けた者 | |
再生・破壊業者 | 第一種特定製品の処分等を目的とした引取りまたはその全部もしくは一部を原材料として利用することを目的とした、有償または無償による譲受けを行おうとする者 |
■フロン類の回収~再生・破壊、機器処分の流れ
第一種特定製品のフロン回収~再生・破壊~機器処分の流れは以下の通りです。
●建物解体とあわせてフロン機器を処分する場合の流れ
|
|
フロン類の回収依頼では、充填回収業者に直接依頼するというパターンのほか、取次者を介して依頼するパターンもあります。取次者が入ることで不明点などを相談しやすくなりますが、取次者が増えると取り交わす書類が増え、プロセスが煩雑になるというデメリットもあります。
■フロン回収行程管理票の役割:誰が誰にフロン回収を依頼したのかを正しく記録・管理する
フロン回収の各段階で関係者がリレーし、記録を残していくために使用されるのが「フロン回収行程管理票(以下、『フロン行程管理票』)」です。これはフロン版のマニフェストともいえる書類です。
フロン排出抑制法では、フロン類のライフサイクル(製造、使用、回収、再生・破壊)における関係者それぞれが主体となって適正管理や排出抑制に取り組むことを求めています。 また、フロン機器を処分する際、関係者間で手続きの内容を記載した書面を交わすことがフロン排出抑制法で義務付けられており、この際に使用する「回収依頼書」「委託確認書」「再委託承諾書」「引取証明書」などの一連の書面を「フロン行程管理票」といいます。 |
●「フロン行程管理票」
|
●フロン行程管理票(回収依頼書、委託確認書、再委託承諾書、引取証明書、回収依頼書)の概要
回収依頼書 |
機器のユーザー(廃棄等実施者)が、フロン充填回収業者に直接フロン類を引き渡す場合に交付する書面 |
|
委託確認書 | 機器のユーザー(廃棄等実施者)が、取次者(引渡受託者)にフロン充填回収業者へのフロン類の引渡しを委託する場合に交付する書面 | |
再委託承諾書 | 取次者(引渡受託者)がフロン類の引渡しを他の者(2次取次者)に再委託する場合に、機器のユーザー(廃棄等実施者)が交付する、再委託についての承諾書 | |
引取証明書 | フロン類の回収を依頼された業者(フロン充填回収業者)が、回収終了後に交付する、フロン類を確かに回収したことを証明する書面 | |
確認証明書 | 機器のユーザー(廃棄等実施者)からの依頼で、第一種特定製品にフロン類が充填されていないことを確認したフロン充填回収業者が、確認後に交付する書面 |
これらの書面は、フロン排出抑制法で定められた事項が含まれていればよく、様式については特に定めはありません。一般的に使用されている「フロン行程管理票」は、(一財)日本冷媒・環境保全機構(JRECO)が、フロン排出抑制法で定められた記載事項を満たした汎用性のある管理票(複写式)として作成したものです。
参考:環境省「フロン排出抑制法における主な書面の記載事項一覧」
https://www.env.go.jp/content/900448660.pdf
■フロン行程管理票の入手方法
(一財)日本冷媒・環境保全機構のWebサイトに入手先のリストが掲載されています。自社の拠点近くの関連団体に連絡することでフォーマットを入手できます。
参考:https://www.jreco.or.jp/koutei.html
「フロン回収行程管理票(フロン行程管理票)」を用いた行程管理の全体イメージ
次に、フロン行程管理票をどのようにリレーしていくのか見ていきましょう。
■行程管理票の種類と流れ
一般的に使用されている(一財)日本冷媒・環境保全機構(JRECO)作成のフロン行程管理票には、推奨版と汎用版の2種類があります。
- 推奨版
主にフロン回収を充填回収業者に直接依頼する場合や、取次者に依頼する場合に使用
(A票、C票、E票、E票写し、F票) - 汎用版
主にフロン回収の依頼を再委託する場合に使用
(A票、B票、C票、D票、E票、F票)
なお、取次者が複数入る場合には補足版(G~J票)も使用することがあります。
●フロン回収行程管理票(A票~F票)の各書面の用途と関係者
出典:(一財)日本冷媒・環境保全機構 フロン排出抑制法 行程管理票様式「汎用版」「推奨版」資料より当社作成
https://www.jreco.or.jp/data/h_kanri-hanyo_202112.pdf
https://www.jreco.or.jp/data/h_suisyouban_202112.pdf
各関係者の工程ごとの動き(パターン別の具体例)
それでは、具体的に各工程で関係者は何をすればよいのでしょうか。以下、「行程・関係者別の動き」のパターンに沿って、「パターン(1):直接充填回収業者に委託する場合」「パターン(2):引き渡しを委託する場合」「パターン(3):引き渡しを再委託する場合」の各関係者の動きを説明していきます。
■パターン(1):直接充填回収業者に委託する場合(推奨版フォーマット)
(1)フロン類の引渡し準備
関係者 |
必要書類 |
ポイント |
|
フロン行程管理票 | 記載欄 | ||
廃棄する機器の 所有者等 (廃棄等実施者) |
A票 |
取次者欄を除くすべての欄 |
廃棄等を実施する際にA票を記入し、充填回収業者に直接依頼する注:書面は3年間保存(詳細は(3)) |
(2)フロン類の充填回収
関係者 |
必要書類 |
ポイント |
|
フロン行程管理票 | 記載欄 | ||
充填回収業者 (第一種フロン類充填回収業者) |
E票 |
●担当者の部署名、氏名 |
フロン回収後に引取証明書として廃棄等実施者にE票を交付 |
F票 |
「処理方法等」「引き渡し先」の該当項目すべて |
●上記と合わせて記入 |
(3)交付された証明書等の保管
関係者 |
保管する書類 (フロン行程管理票) |
ポイント |
機器の所有者等 (廃棄等実施者) |
A票 |
記入したA票を保存(3年間) |
E票 |
充填回収業者から返却されたE票を保存(3年間) |
|
充填回収業者 (第一種フロン類充填回収業者) |
F票 |
記入したF票を保存(3年間) |
出典:以下ページを参考に当社作成
(一財)日本冷媒・環境保全機構 フロン排出抑制法 行程管理票様式「推奨版」資料
https://www.jreco.or.jp/data/h_suisyouban_202112.pdf
https://www.jreco.or.jp/data/h_suisyouban_r_202112.pdf
■パターン(2):引き渡しを委託する場合(汎用版フォーマット)
(1)フロン類の引渡し準備~フロン回収の取次
関係者 |
必要書類 |
ポイント |
|
フロン行程管理票 | 記載欄 | ||
廃棄する機器の 所有者等 (廃棄等実施者) |
A票 |
第一種フロン類充填回収業者欄を除くすべての欄 |
廃棄等の実施を取次者に依頼する際に記入 |
取次者 注:第一種特定製品の運搬のみを委託する場合の運搬業者は取次者に該当しません |
C票 |
●取次者の部署名、氏名 |
充填回収業者に依頼する際に記入 |
(2)フロン類の充填回収
関係者 |
必要書類 |
ポイント |
|
フロン行程管理票 | 記載欄 | ||
充填回収業者 (第一種フロン類充填回収業者) |
E票 |
●担当者の部署名、氏名 |
フロン回収後に引取証明書として廃棄等実施者にE票を、取次者にE票の写しを交付 |
F票 |
「処理方法等」「引き渡し先」の該当項目すべて |
●上記と合わせて記入 |
(3)交付された証明書等の保管
関係者 |
保管する書類 (フロン行程管理票) |
ポイント |
機器の所有者等 (廃棄等実施者) |
A票 |
記入したA票を保存(3年間) |
E票 |
充填回収業者から返却されたE票を保存(3年間) |
|
取次者 |
C票 |
記入したC票を保存(3年間) |
E票(写し) |
充填回収業者から返却されたE票(写し)を保存(3年間) |
|
充填回収業者 (第一種フロン類充填回収業者) |
F票 |
記入したF票を保存(3年間) |
出典:以下ページを参考に当社作成
(一財)日本冷媒・環境保全機構 フロン排出抑制法 行程管理票様式「汎用版」資料
https://www.jreco.or.jp/data/h_kanri-hanyo_202112.pdf
https://www.jreco.or.jp/data/h_kanri-hanyo_r_202112.pdf
■パターン(3):引き渡しを再委託する場合(汎用版フォーマット)
(1)フロン類の引渡し準備~引き渡しの取次の再委託
関係者 |
必要書類 |
ポイント |
|
フロン行程管理票 | 記載欄 | ||
機器の所有者等 |
A票 |
第一種フロン類充填回収業者欄を除くすべての欄 |
廃棄等の実施を取次者に依頼する際に記入 |
B票 |
再委託の承諾に関する欄 |
取次者から再委託伺いがあった場合、フロン回収行程管理票【B票】の承諾欄に記入 |
|
取次者(1) |
B票 |
●担当者の部署名、氏名 |
取次の再委託を行う場合に記入が必要。廃棄等実施者に確認し、承諾に関する欄に記入してもらう |
C票 |
2次取次者(再委託先)への交付年月日 |
充填回収業者に依頼する場合、取次を再委託する場合の両方について記入が必要。 |
|
取次者(2) (再委託先の取次者) |
D票 |
●2次取次者の部署名、氏名 |
充填回収業者に依頼する際に記入 |
(2)フロン類の充填回収
関係者 |
必要書類 |
ポイント |
|
フロン行程管理票 | 記載欄 | ||
充填回収業者 (第一種フロン類充填回収業者) |
E票 |
担当者の部署名、氏名、フロン類引取の終了年月日、引取証明書の交付年月日、充填回収技術者氏名、「回収量等」の該当項目すべて |
フロン回収後に引取証明書として廃棄等実施者にE票を、最終取次者にE票の写しを交付 |
F票 |
「処理方法等」「引き渡し先」の該当項目すべて |
●上記E票と合わせて記入、 ●再生・破壊処理に引き渡す場合には、本票の別票(フロン類再生・破壊依頼票)を使用することもできる |
(3)交付された証明書等の保管
関係者 |
保管する書類 (フロン行程管理票) |
ポイント |
機器の所有者等 (廃棄等実施者) |
A票 |
記入したA票を保存(3年間) |
B票 |
再委託の承諾に関する欄に記入したのち、保存(3年間) |
|
E票 |
充填回収業者から返却されたE票を保存(3年間) |
|
取次者(1) |
C票 |
記入したC票を保存(3年間) |
取次者(2) |
D票 |
記入したD票を保存(3年間) |
E票(写し) |
充填回収業者から返却されたE票(写し)を保存(3年間) |
|
充填回収業者 (第一種フロン類充填回収業者) |
F票 |
記入したF票を保存(3年間) |
出典:以下ページを参考に当社作成
(一財)日本冷媒・環境保全機構 フロン排出抑制法 行程管理票様式「汎用版」資料
https://www.jreco.or.jp/data/h_kanri-hanyo_202112.pdf
https://www.jreco.or.jp/data/h_kanri-hanyo_r_202112.pdf
フロン行程管理票の記入例
(一財)日本冷媒・環境保全機構のフロン行程管理票については、Webサイトで各フォーマットの記入例を確認できます。
参考:https://www.jreco.or.jp/koutei.html
フロン回収行程管理の注意すべきポイント
■引取証明書が届かなかったら
廃棄等実施者は、委託確認書を交付した日から 30 日以内に引取証明書が届かない場合、回収依頼書の写しを添付のうえ、都道府県知事へその旨を報告しなければなりません。なお、解体工事に伴い委託確認書を交付した場合には、委託確認書の交付した日から 90 日以内となっています。
●フロン類の回収を第一種フロン類廃棄等実施者が第一種フロン類充填回収業者に直接依頼した場合の送付期間 |
●フロン類の回収を第一種フロン類廃棄等実施者が第一種フロン類引渡受託者を通じて第一種フロン類充填回収業者に依頼した場合の送付期間(受託者介在) |
出典:「充填回収業者・引渡受託者・解体工事元請業者・引取等実施者等に関する運用の手引き」より当社作成
https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r03_tebiki_operator_rev3.pdf
■引取証明書に記載の不備や誤りがあったら
引取証明書の記載事項に不備または虚偽記載がある場合には、速やかに回収依頼書の写しまたは委託確認書の写しを添付して、都道府県知事に報告する必要があります。
その他の注意すべきポイント
■建物の解体時に事前確認を
建築物等の解体工事の元請業者は、明らかに第一種特定製品が設置されていない場合を除き、第一種特定製品の有無について確認し、工事発注者に対してその結果を書面(事前確認書)で説明するとともに、その書面の写しを3年間保存しなければなりません。
関係者 | 必要書類 |
ポイント |
解体工事の 発注者 工事元請業者 |
事前確認書 ●設置されている第一種特定製品の種類と台数(フロン類回収済み、未回収) |
解体工事を伴う場合、工事発注者と元請業者の間でフロン類が充填されている第一種特定製品の有無を事前に調査・確認し、発注者に書面(事前確認書)を交付して説明する。交付した事前確認書の写しを3年間保存する。 |
工事元請業者 |
■フロン類の回収等が確認できない第一種特定製品は引取り禁止
廃棄物回収業者、リサイクル業者など(引取等実施者)にフロン回収済み機器を引き渡す場合、依頼する側にはフロン類の回収済み証明書(行程管理票E票写し(引取証明書または確認証明書の写し))を交付することが義務付けられます。また、引取等実施者の側でも、フロン類の回収等が確認できない第一種特定製品の引取りを禁止されています。なお、このケースにおける「引取り」には、金属資源などとしての無償・有償での引取りは含まれますが、中古品としての引取りは含まれません。
●第一種特定製品の引渡し・引取りができる場合
出典:「第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引」より当社作成
https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r03_tebiki_kanri_rev3.pdf
■機器所有者等に罰則が科せられる例も
対応に不備があった場合、機器所有者等に罰則が科せられることもあります。代表的なものとしては次のような例が挙げられます。
- 冷媒を回収せずに機器を廃棄した場合
50万円以下の罰金(直罰) - 行程管理票の未記載、虚疑記載、保存義務への違反があった場合
30万円以下の罰金(直罰) - 廃棄機器を引取業者に引き渡し、行程管理票の引取証明書の写しが未交付であった場合
30万円以下の罰金(直罰)
まとめ
フロン回収行程管理票は、フロン回収・機器の廃棄を適正に行う上でのガイドとなります。ただし、ほかにも必要な証明書などがあること、全体のフローは取次者の数でも異なることなどに注意が必要です。全体の行程・業務を常に整理・把握することが、確実な管理と負荷低減の両立につながります。
また、書類の保管(3年間)やフローの迅速化を目的に、今後は電子化への対応要請なども拡大する可能性があります。最新の動向を引き続き見極めていく必要があるでしょう。