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トップ対談 高度循環型社会の実現を目指して―共同持株会社「TREホールディングス」を設立(後編)

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リバーホールディングス(株)と(株)タケエイは、
2021年10月1日に共同持株会社「TREホールディングス(株)」を設立しました。

日本の静脈産業をリードする両社の経営統合は日本の産業・社会・経済にこれから、どのようなインパクトをもたらしていくのでしょうか。
設立の意図・ねらい、さらには中長期的に見据えている未来について
新会社の経営をリードする両社の社長にお話しいただきました。

目次

アセット 3.png 阿部光男

株式会社タケエイ 代表取締役社長

TREホールディングス株式会社 代表取締役社長

アセット 1.png 松岡直人

リバーホールディングス株式会社 代表取締役社長執行役員

TREホールディングス株式会社 代表取締役会長


前編はこちら

なぜ今「循環型社会の実現」が必要なのか

「循環経済ビジョン2020」での環境対策から経済政策へ認識の転換

阿部 近年、気候変動問題や廃プラスチック問題、資源・エネルギー問題などの影響が深刻化していますが、これらの問題とその影響、さらには本質的な原因を俯瞰して捉え、より本質的な解決策を導いていかなければならないと我々は考えています。「循環型社会の実現」は、これらの地球環境問題の本質的な解決策になり得ると考えているからです。

松岡 これらの地球環境問題は、20世紀型の「リニアエコノミー(直線経済)」がもたらした課題、すなわち大量生産・大量消費・大量廃棄型経済がもたらした課題だと私は捉えています。つまり、本質的には経済システムの問題であり、産業構造の問題です。これらの問題を根本的に改善・解決していくには、経済システムや産業構造の転換を図る必要があります。「リニアエコノミー」から「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への転換が必要なのです。資源を消費して廃棄するという直線的なマテリアルフローから脱却し、廃棄された資源を回収し、再生・再利用し続ける循環型のマテリアルフローの構築が必要なのです。

阿部 サーキュラーエコノミーは、廃棄物処理・リサイクルの文脈で捉えられがちですが、そのメリットはそれだけではありません。廃プラスチック問題やひっ迫する廃棄物最終処分場の残存容量の問題などの改善・解決に寄与することはもとより、資源・エネルギー問題や気候変動問題への処方箋として、さらには新たな産業・雇用創出といったポジティブなインパクトも期待されています。地球社会の持続可能性を妨げるさまざまな課題の解決と結びついているのです。

松岡 20205月に経済産業省から「循環経済ビジョン2020」が公表されましたが、これは非常に大きなトピックでした。つまり、日本政府が「環境対応」としてではなく、「経済政策」として循環型社会づくりの必要性・重要性を発信したという点で、その意義は極めて大きいと捉えています。

阿部 我が国は、2000年代初頭より、世界に先駆けて3RReduce, Reuse, Recycle)に取り組み、廃棄物の最終処分量の削減やリサイクル率の向上等の着実な成果を上げてきました。しかしながらそうした取り組みは、廃棄物・環境対策としての域を出ることはありませんでした。つまり、「コスト」としてしか認識されてこなかった訳です。

松岡 ところが、国内外の経済社会情勢の変化を背景にその認識が変わり始めました。特に世界的な人口増加と経済成長を背景に、近年ではリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行が世界的な潮流になりつつあり、欧州ではそれをアフターコロナの成長戦略の中心に位置付けています。つまり、循環経済化が「成長ドライバー」として認識されている訳です。「環境課題解決と経済成長との好循環」につなげようとするこうした潮流を捉えたビジョンは、サステナビリティが問われる時代の経済政策として大きな可能性を秘めていると感じています。

「動静脈産業間連携」でサーキュラーエコノミーの実現へ

阿部 サーキュラーエコノミーを実現するためには、産業構造全体を「循環性の高いビジネスモデル」に転換していくことが必要不可欠です。そのためには、産業構造を形成する動脈産業、静脈産業、消費社会、そして投資家というプレイヤーが、これまでの価値観から脱却し、それぞれが循環性の高いビジネスモデルへとシフトを図っていくことが重要です。

松岡 とりわけ重要なのが「動脈産業」と「静脈産業」による連携、すなわち「動静脈産業間連携」です。動脈産業にはこれから、従来型の「モノづくり産業」から、循環性をデザインしリサイクルをリードする「循環産業」へのシフトが期待されています。そこでは製品の長寿命化や再生材を有効活用したモノづくりなどがこれまで以上に問われます。こうしたなか、我々静脈産業にも変革が求められています。それは「廃棄物処理・リサイクル産業」から「リソーシング産業」へのシフトです。つまり、静脈産業事業者は今後、動脈産業へ高品質な再生材を安定供給する「資源会社」へと変わっていかなければなりません。

阿部 静脈産業には、多様な使用済み製品を広域に回収する仕組みづくりと、自動選別技術などを活用した高品質な再生材の安定供給がこれまで以上に問われてきます。たとえば、動脈産業事業者のなかでも先進企業では、再生材の品質はもとより、その再生材の由来まで管理したいというご要望をいただいています。つまり、再生材供給においてもトレーサビリティが問われるようになりつつあります。こうした動脈産業の期待と信頼に応えていくためには、我々静脈産業もそうした動向に柔軟に適応していかなければならないと考えています。

松岡 その一方で、静脈産業から動脈産業への働きかけも重要になってくると私は考えています。産業構造における「川上」と「川下」という区分けは今後変わっていくと想像しています。これまでは、動脈産業がつくった製品を、社会で消費された後に、静脈産業が回収し処理するという一方向的な流れしかありませんでした。動脈産業から見れば、静脈産業は、廃棄物処理の委託先でしかなかった訳です。ところが循環経済を実現するためには、従来とは逆のベクトルが必要になってくると考えています。つまり、高品質な再生材の安定供給をはじめ、循環利用しやすい環境配慮設計の提案や広域にわたるリサイクルルートの構築など、循環経済を共に構築するパートナーとして、静脈産業から動脈産業へ働きかけていく機会をこれまで以上にべきであり、増やしていきたいと私は考えています。

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「循環型社会づくりの実現」に向けて、静脈産業がクリアすべき課題とTREホールディングスとしてのビジョン・戦略とは

阿部  松岡社長も仰る通り、「動静脈間連携」は循環型社会づくりを実現するための要諦です。しかしながらその一方で、動脈産業と静脈産業では、事業規模や経営資本、社会的信用力などに大きな差異があり、連携に向けた交渉は一筋縄ではいかないことも少なくありません。この差異が連携を推進するうえでボトルネックになっている側面があります。

松岡 そのボトルネックを解消するためには、我々静脈産業のグレードアップが必要不可欠と私は考えています。循環型社会を実現するために「リソーシング産業」として静脈産業が何よりもまず果たすべき重要な役割は「高品質な再生材の安定供給」です。そして、その役割を果たすために、TREホールディングスは今後、地域の垣根を超えた広域の資源回収の仕組みづくりや、動脈産業が製造する多種多様な素材・製品に対応するリサイクル技術、そして高品質な再生材を安定供給できる生産能力のスケール化などに取り組んでいきたいと考えています。

阿部 日本の静脈産業には、地方自治体の許認可を受けながら事業を営んできた歴史があります。こうした歴史を背景に日本の静脈産業事業者は、事業規模が小さく、地域の垣根に遮られ事業活動エリアが限定的で、そして技術的な対応力も高くないのが実情です。高度循環型社会の実現に向けて静脈産業への期待が高まる一方で、静脈産業事業者は、高品質な再生材を安定供給する役割を果たすうえで、さまざまな課題を抱えています。だからこそ、日本の静脈産業にはいま、変革が必要なのです。

松岡 私は以前より、日本の静脈産業はそうした課題の克服に向けて連携・連帯を加速させていく必要性を感じていました。そしてその受け皿となる「静脈産業プラットフォーム」の必要性を折に触れて発信していました。TREホールディングスは、今後「同じ志を持つ静脈産業事業者」が合流できるプラットフォームになり得ると考えています。今回の経営統合は、日本の静脈産業の再編のはじまりというのが我々の見解です。日本の静脈産業は、今こそ力強く変わっていかなければなりません。

こちらのトップ対談が掲載されておりますサステナビリティレポート2021はリバーホールディングスのHPにて公開しております。

サステナビリティレポート2021

本レポートは、当社理念である「地球を資源だらけの星にしよう。」の達成のため、持続可能な地球・社会の実現に向けた活動の進捗を「E:環境」「S:社会」「G:ガバナンス」の視点に沿って紹介しています。

ぜひご覧ください!