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マテリアルリサイクルとは?仕組みからメリット・課題までを徹底解説

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プラスチック容器や紙、金属缶などの廃棄物は、適切に処理すれば新たな製品に生まれ変わります。本記事では、マテリアルリサイクルの基本的な仕組みから、メリット・課題、具体的な事例、そして私たちができる取り組みまでを解説します。限りある資源を大切にし、持続可能な社会を実現するために、マテリアルリサイクルについて理解を深めましょう。

目次

マテリアルリサイクルとは?

使用済のプラスチックや紙、金属製品は、新しい製品に再生されます。その仕組みのひとつが「マテリアルリサイクル」です。

 

マテリアルリサイクルの定義

マテリアルリサイクルとは、使用済製品や廃棄物を原材料として再利用し、新しい製品を作る手法です。物理的処理により廃棄物を資源として再生させ、天然資源の消費や環境負荷を抑えることを目的としています。 

ここでは、ペットボトルを例に、マテリアルリサイクルのプロセスを解説します。

1.収集(回収)

家庭や企業から排出される使用済製品や廃棄物は、自治体による分別回収のほか、店舗に設置された回収ボックスなどさまざまな方法で回収されます。

2.分別

回収されたペットボトルは、他のプラスチックや異物と分けられます。この工程により、効率的な再生処理が可能になります。

3.処理・再生(洗浄・破砕・粉砕など)

分別されたペットボトルは、洗浄して汚れやラベルを取り除いた後、破砕機や粉砕機で細かく砕かれ、原材料として使いやすい状態に加工されます。

4.製品化

再生された原材料は、新しい製品に生まれ変わります。たとえば、繊維製品や新しいペットボトルなど、多様な製品に利用されます。 

また、スマートフォンのマテリアルリサイクルについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
https://www.re-ver.co.jp/ecoo-online/recycling-forefront/202403191.html

 

素材の種類によって、マテリアルリサイクルのプロセスや手法は異なります。



マテリアルリサイクルと他のリサイクル手法との違い

リサイクルの手法には、マテリアルリサイクルのほかに、「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」があります。

 

ケミカルリサイクル

廃棄物を化学反応によって分解し、化学原料に戻す手法です。再利用が難しい複雑な素材や、汚れの多い廃棄物でも処理できる点が特徴ですが、高度な技術や設備が必要なため、コストが高くなる傾向があります。

 

サーマルリサイクル

廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを回収して利用する手法です。ごみ焼却施設で発生する熱を利用して発電したり、温水を供給したりするプロセスが代表例です。再生が難しい廃棄物でもエネルギーとして活用できますが、焼却によって資源そのものは失われます。

これら3つのリサイクル手法は、廃棄物の状態や素材の種類、コスト、再利用後の品質などに応じて使い分けられています。2023年の日本における廃プラスチックの有効利用率は89%で、内訳はマテリアルリサイクル22%、ケミカルリサイクル3%、サーマルリサイクル(エネルギー回収)64%となっており、現状ではサーマルリサイクルの割合が最も高くなっています。

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循環型社会の実現に向けては、資源を物質として循環させるマテリアルリサイクルの比率を高めていくことが重要な課題です。


マテリアルリサイクルのメリットと課題

マテリアルリサイクルには、資源の有効活用や環境負荷の軽減など、さまざまなメリットがあります。一方で、再生資源の品質低下や分別・処理に伴うコストなど、いくつかの課題も存在します。ここでは、主なメリットと課題を見ていきます。

 

マテリアルリサイクルのメリット

マテリアルリサイクルには、主に3つの大きなメリットがあります。

第一に、資源の節約が挙げられます。
再生資源を活用することで、石油や鉱物などの天然資源の消費を抑制できます。限りある地球資源を次世代に残すうえでも重要です。 

第二に、廃棄物の削減が実現できます。
廃棄物を資源として活用すれば、最終処分場に送られるごみの量を減らし、処分場の延命につながります。 

第三に、環境負荷の低減効果があります。
原材料の採掘から製造までのプロセス全体を見ると、再生資源の利用は、新規材料と比べてエネルギー消費量やCO₂排出量が少なくなるケースが多いとされています。これは地球温暖化対策としても有効です。

 

マテリアルリサイクルの課題

一方で、マテリアルリサイクルにはいくつかの課題も存在します。 

第一に、品質の低下(いわゆるダウンサイクル)が挙げられます。
リサイクルを繰り返すと、元の製品よりも品質が劣化する場合があります。プラスチックや紙は再生を繰り返すと劣化します。一方、鉄やアルミニウムのように、品質がほとんど低下することなく繰り返しリサイクルできる素材も存在します。 

第二に、分別・回収の難しさがあります。
異なる種類の素材や異物が混入すると、再生材の品質を大きく下げます。 

第三に、経済性の問題もあります。
回収、運搬、選別、加工といった各プロセスにコストがかかるため、場合によっては再生材を使った製品の方が割高になることがあります。その結果、事業としての経済性(採算性)が課題となるケースも少なくありません。

 

代表的なマテリアルリサイクルの事例

マテリアルリサイクルは、私たちの日常生活の中で幅広く実践されています。ここでは、特に身近な素材であるプラスチック、紙、金属のリサイクル事例を取り上げ、それぞれの具体的なプロセスや特徴について詳しく見ていきます。

 

事例①プラスチックのリサイクル

ペットボトルの「ボトルtoボトル」リサイクルが代表例です。これは、回収されたペットボトルを粉砕・洗浄し、再び原料としてペットボトル用に利用する技術です。従来は回収されたペットボトルが食品トレイや繊維製品に再生されることが一般的でしたが、関連する指針等に基づき、飲料容器など食品用途への活用も進んでいます。
また、ペットボトルは繊維原料として再生され、フリースやスポーツウェア、ユニフォームなどの衣料品に利用されるケースもあります。

 

事例紙のリサイクル

古新聞や雑誌、段ボールなどの古紙を回収し、水と一緒にパルプ状にして異物を取り除きます。その後、新しい紙製品(トイレットペーパーや段ボール箱、コピー用紙など)に生まれ変わるのが一般的な流れです。感熱紙や汚れた紙はリサイクル対象外となる場合があります。 

 

事例③金属のリサイクル

金属は、極めて高いリサイクル性を持っています。アルミ缶の場合、「缶to缶」へ水平リサイクルされ、何度も繰り返し原料として使うことができます。アルミニウムはリサイクル過程でも品質がほとんど劣化せず、エネルギー消費やCO₂排出の削減にも大きく寄与します。リサイクルによって、新たにアルミを製造する場合と比べて大幅なエネルギー削減効果(約97%とされる)が得られる点も特徴です。 

鉄は、リサイクルを繰り返しても品質がほとんど低下しない素材であり、マテリアルリサイクルに非常に適しています。磁力による選別が可能なことも特長で、回収された鉄は、主に建材や各種鋼材の原料として再資源化されています。

 

マテリアルリサイクルを効果的に進める方法

マテリアルリサイクルを社会全体で効果的に機能させるには、企業によるシステム構築と技術革新に加え、個人による日々の行動の両輪が不可欠です。ここでは、循環型社会の実現に向けて、それぞれの主体が具体的にどのような施策や参加をすべきかについて解説します。

 

方法企業が取り組むリサイクル率向上の施策

リサイクル率の向上は、企業の社会的責任であり、持続可能な経営にもつながります。 

まず重要なのが、再生資源の積極的な利用です。企業は、製品の原材料として再生プラスチックや再生紙、再生金属などの再生資源の採用を推進していくことが期待されます。例えば、飲料メーカーの「ボトルtoボトル」推進は、リサイクル市場の拡大と資源消費の抑制に貢献しています。再生資源の利用拡大は、リサイクル事業を経済的に成立させるための需要を創出する重要な要素です。 

次に、モノづくりにおけるデザインの工夫が求められます。これは「リサイクルしやすい設計(Design for Recycling)」と呼ばれ、製品企画の段階からリサイクルのしやすさを考慮します。具体的には、単一素材の使用、異なる素材を組み合わせる場合でも分解しやすい構造にする、リサイクルを妨げる添加物を避けるなどの工夫があります。例えば、家電製品では分解しやすいネジ止め構造の採用や、プラスチック部品への材質表示などが実施されています。 

さらに、消費者がリサイクルしやすい容器包装の工夫も重要です。例えば、ペットボトルのラベルをはがしやすいように粘着力を調整したり、プラスチック容器の素材表示を分かりやすくしたりする取り組みです。環境省のガイドラインに基づき、消費者にとって迷いのない排出を促すことは、リサイクル原料の品質低下を防ぐうえで決定的な役割を果たします。こうした企業努力が、リサイクルの精度を高めます。

 

方法個人が取り組むリサイクルへの参加

リサイクルを支えるのは私たち一人ひとりです。個人の意識と行動こそが、マテリアルリサイクルの成否を握っています。 

環境負荷を減らすためにまず取り組みたいのが、分別ルールを正しく守ることです。回収できるごみの種類や出し方は地域や自治体ごとに異なるため、定められた方法に従って分ける必要があります。例えば、プラスチック容器は中身を洗い、食品カスや油分が残らないよう注意します。分別が適切に行われるほど、再生原料の品質が保たれ、処理の効率も高まります。 

あわせて意識したいのが、ごみそのものを出さない工夫です。マイバッグやマイボトルを使えば、使い捨て製品の購入を抑えられます。過剰な包装を断る行動も、ごみの発生を防ぐ有効な手段です。こうした取り組みは、製品が廃棄される前の段階で環境への影響を小さくします。 

さらに、再使用を心がける姿勢も重要です。不要になった物でも、状態が良ければフリマアプリで販売したり、他人に譲ったり、寄付したりできます。このような行動は、物の使用期間を延ばし、新たな資源の消費を抑える効果があります。3Rの考え方では、まず減らすこと、次に繰り返し使うことを優先し、再生利用は最後の選択肢とします。日常の買い物や使い方を少し見直すだけでも、環境への負担は着実に軽減できます。

 

まとめ:循環型社会におけるマテリアルリサイクルの役割

マテリアルリサイクルは、資源の有効活用と環境負荷の低減を実現する重要な手法です。ここまで見てきたように、プラスチック、紙、金属など、私たちの身の回りにある、さまざまな素材がマテリアルリサイクルされており、天然資源の消費削減やCO₂排出量の抑制に大きく貢献しています。
しかし、マテリアルリサイクルは完全な解決策ではありません。品質の劣化や分別・処理コストの課題、すべての素材に適用できるわけではないという限界もあります。だからこそ、ケミカルリサイクルやサーマルリサイクルなど、他のリサイクル手法と適切に組み合わせることが重要です。素材の特性や状態に応じて最適なリサイクル手法を選択することで、より効果的な資源循環が可能になります。 

実際に、マテリアルリサイクルの高度化に向けて、企業間の連携も進んでいます。
例えば、住友化学株式会社とリバーの業務提携(注1では、使用済自動車由来の廃プラスチックを対象としたマテリアルリサイクルに向けて、 資源回収から分別、再資源化に至る一連のシステムを構築し、プラスチックリサイクルの早期の事業化を目指しています。

このような企業間連携は、マテリアルリサイクルの高度化に向けた取り組みの一例といえます。 

循環型社会の実現には、企業の技術革新や製品設計の工夫、行政による制度整備やインフラ整備、そして私たち一人ひとりの日常的な分別やリデュース・リユースの実践が必要です。それぞれの立場でできることを着実に実行し、協力し合うことが、持続可能な社会を築く鍵となります。 

マテリアルリサイクルは、限りある地球資源を大切に使い、次世代により良い環境を引き継ぐための重要な手段です。私たち一人ひとりの小さな行動が、持続可能な社会への大きな一歩となります。 

(注1)住友化学株式会社との業務提携に関するお知らせ | ニュース | 廃棄物処理のことならリバー
https://www.re-ver.co.jp/news/20230426.html

 

マテリアルリサイクルのご相談はリバーグループへ

リバーグループでは、金属スクラップや使用済自動車、産業廃棄物、廃家電など、さまざまな使用済製品のリサイクルを行っています。
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