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動脈産業と静脈産業のお話し

2017年07月07日

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目次

創出の「動脈」と回収の「静脈」、連携の時代

高度循環型社会の実現に向けて着実に歩み始めた日本

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製造業など製品を生み出す「動脈産業」、その廃棄物を回収して再生・再利用、処理・処分などを行う「静脈産業」。血液の循環にたとえてこんなふうに呼ばれていますが、滞りなく循環するためには双方のバランスと連携が大切です。動脈産業ばかりが肥大し、回収が追いつかなかった時代を経て、今、新しい循環のカタチが必要とされています。

大量生産・大量廃棄の時代

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戦後の高度経済成長期は、大量生産・大量消費の時代でした。それは同時に家庭からも企業からも大量のごみを排出することになり、50〜60年代は公害問題が顕在化。水俣病やイタイイタイ病などに代表される公害は、多くの人の健康を奪う悲しい事態を引き起こしました。それが契機となり、工場から排出される有害物質の適正な処理を義務づけた法律が制定され、80年代までに着実に進展したのです。これに対し、ごみ対策は困難を極めます。バブル景気によって動脈産業はますます発展し、廃棄物量はさらに増加。しかもその種類は多用化し、埋立に必要な最終処分場の不足が深刻化しました。

戦後最大級の大量不法投棄事件 香川県豊島

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そんななか、大きな転機となったのが、香川県豊島(てしま)を舞台にした産業廃棄物の大量不法投棄事件です。 90年に摘発されたこの事件、汚染された土壌を含む廃棄物の量は90万トン以上で、その撤去には14年もの歳月がかかりました。これをきっかけに廃棄物処理に対する規制が強化され、各種リサイクル法が制定。そして、静脈産業の重要性が高まっていきました。

循環型社会から、動脈と静脈の連携「高度循環型社会」へ

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さらに、2000年には「循環型社会形成推進基本法」が制定。これは、事業者だけでなく一般市民も加わった3Rの取組によって持続可能な循環型社会を目指すための法律です。取組の進み具合の指標になる「28年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」(環境省)「物質のフロー」というデータから割り出すと、この13年間で新たに使う資源などは27%減り、資源のリサイクルは26%増ということになります。そして、埋立など最終処分されるごみは一般廃棄物と産業廃棄物を合わせて71%も減りました。諸外国も温暖化対策として埋立を回避する努力をしています。 国土が狭いことからも廃棄物を減らさなければならない事情があった日本。これまでは動脈産業と静脈産業がそれぞれに努力して、大量生産・大量消費・大量 廃棄の社会から循環型社会へと近づいてきました。さらに高度な循環型社会を目指していく今後は、動脈産業と静脈産業、両者の連携が必須となってくるでしょう。